熱く未来を呼び覚ます

特殊戦技教導隊という実績はどこでも欲しいもの。
ブランシュタイン家の跡継ぎであるエルザムや叩き上げの実力者であるカイ少佐ほどではないが、教官や小隊長の口はいくらでもあった。
しかし俺は、その話を蹴った。
亡霊が怖くなって逃げたのだという中傷もあった。
彼らは全く根拠もなく――強いて言うなら自分の恐れを投影して言っているのだろうが――確かにその面がない訳ではない。
俺はどこに行っても“ゲシュペンスト”と巡り会う。
それもまた宿命というものなのだろう。
しかし俺はこの機体が好きだった。
一言で言えば、好き好んで呪われている。
だが俺には指揮官などの立場は向いていない。よくわかっている。
そして後続者たちに備えるために、俺は情報部への配属を志願した。
――今離れていようが、俺はまた亡霊と共に戦う羽目になる。
俺には、それがわかる。

とりあえずここの上官はそう悪くない人間だったようで、安心した。
「それでは少佐、君が配属されるチームのメンバーを紹介しよう。さあ皆、入りたまえ」

――――何の、因果だ。

「光次郎です! 一緒に正義と平和のために頑張りましょう!」
調子が狂う。
「私は壇です。よろしく、ギリアム少佐。その若さでそのキャリアとは、たいしたものですな」
運が良かったというか悪かったというか。
「僕は怜次といいます。よろしく」
「……よろしく頼む」
――ぶっきらぼうだけど結構まともな感じだな。
そう思っているだろう!? 俺にはそれがわかるんだ!!

「………………大佐、これは…………」
「いずれも非常に優秀な情報部員だ。君のためにかき集めた。うまくやりたまえ」
わかるはずもない、か。これの意味する所なんて。
あの世界を知り、予知能力を持つ俺にも読めなかったのだから。
「……了解です」
やはりこの世界は、実験室のフラスコだ。

「? どうしました、少佐?」
「いや……何でもない」
嫌いでは、ないのだが。ないのだが……!
実際良さそうな――
「それじゃ、折角だからチーム名でも! 『光次郎と愉快な仲間たち』でどうですか?」
「「却下」」
――拝啓、我が友よ。俺は正直な話、生きることに疲れている。
「じゃあ、そっちはどうするんすか」
「ん……『エープリルレイン』というのはどうかな」
「随分詩的だな」
「ええ。『三月の風、四月の雨、五月の花を咲かせるために』……僕たちは前線に立つことはありませんが、花を咲かせる手伝いくらいは出来るんじゃないかと」
「ふむ、ならば私はZariba of All」
「わー、わー!!」
微妙に違うぞ、二人とも!
「どうしたんですか、ギリアム少佐。さっきから」
「……いや……環境の変化に慣れなくてな。すまない」
本当に、タチの悪い冗談だ。
「じゃあ、とりあえず質問! 少佐ならどんな名前をつけますか?」
――――Zephes Extream Unisonous Spearcarrier…
毒されたのか、ふとそんな言葉がよぎった。
こじ付けにも程がある。
「……そんなことより、これからの任務について説明する」
冷静になれ、ギリアム・イェーガー。
これも、かつて罪を犯した俺の宿命だ。多分。きっと。

***************

「やはりゲシュペンストでも十分やれますよね。もちろん少佐の腕もありますけど」
「改修後のメイン武装になるんですよね、あれ。もう1つ、『ヴァンピーア・レーザー』も」
「ああ。マオ社の連中もよくやってくれる」
確かにゲシュペンストの有用性を示すと共に新型武器のテストもするのがハロウィン・プランの理念ではあるが。
――悪趣味なのは、俺自身だけで十分だ。

「ところでギリアム少佐」
「どうした? 怜次」
「やっぱりパイロットでいたいものですか?」
――――その台詞もどこかで聞いたような気がするが。
「はは、大丈夫さ。ここも居心地がいい」
「あ、でもあの美女が気になるんじゃないですか? 俺にも紹介して欲しいなぁ」
「……光次郎、見ていたのか?」
「見て、って訳じゃないですけどよく話して」
「よせよせ。少佐にもプライベートがある」
「…………彼女は非常に優秀なビジネスパートナーだ」
その表現が適切である状況は、俺自身にとっては望ましくないが、それ以外の未来には――きっと正しいのだろう。
「だが、君たちのことも信頼している。それでは不満か?」
「不満なんて、そんな」
「ならいい。では皆行くぞ」

まだ見えない彼らの未来が、希望に溢れたものでありますように。

 

電スパVol8(クロニクル3巻収録)の八房漫画ネタ。一応オフィシャル漫画のはず……!!
情報部の方々、ニック&コーリャ&フレディかF主人公(特にジェス&ミーナがそれっぽい)だと思っていましたがこう来るとは読めなんだ。
とにかく彼らを書きたくて。そして元々の漫画自体がパロディ全開なので、自然とそう。まあ最初に思いついたのはチーム名ネタだけですが。
ギリアムが思いついたチーム名の前半はこのSSのタイトル的な意訳になります。後半は「同調した支え役」みたいな。 辞書とにらめっこ(苦笑)
なお、怜児のは64の「マーチウィンド」壇のはタロウの防衛隊、元のゼウスはZet Extraordinary United Space・連盟特別大使、です。
微妙にギリヴィレなのはこのサイトの仕様。漫画でも出ましたし! とにかくあの漫画大好きです!!

 

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