直撃!プレゼント作戦

「わー! さすが飛鳥くん! ありがとう!!」
ぼくたち陽昇学園の5年3組では、女子の皆の黄色い声が上がっていた。
その中心にいるのはやっぱり飛鳥くん。
ファンクラブの子たちにちゃんとプレゼントをしたみたい。
「本当、仁くんとは大違い」
「お前らなんかに誰がやるかってんだよ。ホワイトデーってお返しをする日だろ」
「あーら、じゃあ」
仁くんはマリアちゃんの声にドキリと振り返った。
やましいことがあるんだなぁ。
「私にはくれるのよねー、仁?」
「え!? マリアちゃん、仁くんにチョコ渡したの?」
途端に大騒ぎが別の話題になったけど、マリアちゃんはちょっとクールに言った。
「物欲しそうな顔してたから。誰からも貰えないなんてかわいそうだしね?」
「してねぇよ! ったく、ホワイトデーなんてメイワ……」
「わー! わー!」
あの時一緒に戦っていた皆も、今頃こうしているのかなぁ。

最上重工社長令嬢、赤月秋水。
それこそ小学5年生の時分から既に父親の趣味に付き合わされてきた15歳。
ロボットに乗り世界を救った英雄の一人、であるのだが、それは公には伏せられている。
ようやく念願の普通の高校生に戻れて、新しい友達も好きな男の子も出来たのだが、問題は山積みだった。
まず、同級生たちの好奇の視線が痛い。元々ではあるけれど。
学校には事情が伝わっているから進級は出来るが、授業内容はフェアリに家庭教師をしてもらってもなかなか追いつけない。
元々――こちらも――あまり成績がいいとは言い難いのだが。
しかし今日は話が別だった。
ずっと機嫌がよく、今も鼻歌を歌いながら帰り支度をしていた。
「秋水、浮き足立っている所悪いけど」
「どうしたのサリー?」
同じクラスに編入したサリー・エーミルが話しかけてきた。
なお、ジーク・アルトリートは二学年上に編入している。
ガディソード人だから歳はあまり関係がなく、同学年でいいのにと言ったらお前とタメなんてゴメンだ、と宣言されてしまった。
確かに地球人年齢に換算すれば約18歳なのだが。
「兄さん、ホワイトデーのこと知っているのかしら?」
「大丈夫だって! ちゃんと3倍返しって言って渡したから!」
「……そもそも、そのプレゼントの意味、わかっていた?」
サリーは元々しっかりしているのと、やはり女性ということもあって、イベントには敏い。
だが、ジークはまだ少々地球文化に不慣れな様子だった。特にこういうことには。
しかし秋水は笑っていた。
「とりあえず『おう、さんきゅ』って」
「わかってない! 兄さん絶対わかってない! もう、秋水ってば、しっかりしてよ!」
「誰がわかっていないって? つかうるせぇぞお前ら」
割り込んできた彼が呆れ顔で呟く。
「あ、ジーク! どうしたの?」
「…………とりあえず外出るぞ。ここだとやかましい」
ただでさえ注目の的になりやすい2人。
その上なかなか二枚目の上級生がやって来たので、主に女生徒の視線が集まっている。
慌てて教室、そして学校を飛び出した。

「で、わざわざ教室に迎えに来て何の用かなー?」
得意気に胸を張って、ジークに問いかける。
「お前がお返しよこせって言ったんだろ! 訳わかんなくて色々調べなきゃなんなかったじゃねぇか!」
「あは! やっぱジーク、私のこと好きなんだ!!」
「ドアホ! 社交辞令というか、その、何だ……!」
「……私、お邪魔みたいだから先帰るわね」
やれやれ、とため息をついて首を振って2人と別れようとする。
ジークは兄同然だし、秋水も気のいい友達だ。
が、この2人が合わさった時の妙なオーラはある意味C.U.B.E.より強大なエネルギーを放っている。
――――私にも思わず惚れちゃうような優しくてカッコいい男の子、現れないかなぁ。
バレンタインも、結局女の子との友チョコ交換以外に渡す相手いなかったし。
義理チョコって習慣もあるけど、初めてはやっぱり本気で恋した相手にあげたい。
「あ、っておい、待て、サリー! お前にも世話になってるし、用意してきたんだよ」
「んもう! ジーク、お歳暮じゃないんだから! それにこの機会にサリーに告白したいって子がいるんだから邪魔しないの」
「……え!?」

告白。
友達は増えたけれど、そんな目で見ている人がいるなんて気付かなかった。

「…………って、やっばーい、やっちゃった! 秘密にしておいてくれって言われてたのに!」
「お前なぁ……」
「本当? ねぇ、秋水、それ本当!?」
「あ、うん。私のイトコなんだけどね。同い年で、クラスは別だけど同じ学校に通ってる。確かマンションの前で待っているはずだよ。そこに住んでるし」
瑞雲の所有するマンション。ジークやサリーはそこに住んでいる。
娘に近付く悪い虫であるジークを住ませるのには猛反対したが、陣風やフェアリの説得によりどうにか事無きを得た。
「ガディソードのことも知ってるし、外見だけ、ってことはないハズだよ」
「ふーん……ま、まあ、会ってみるだけ会ってみようかな……じゃあね!」
制服のスカートとポニーテールを風に揺らしながら、早足で駆けていった。
「ふふふー、楽しみだね!」
「んー、まあ、お前のイトコっていうなら無茶な事態も慣れているだろうしそう悪くないんだろうな」
腕を組みながら2人も歩き出す。
「でも地味だねー。3倍返しって言ったのに」
「飴玉くらいでいいって資料にはあったんだよ。デタラメ言ってんな!」
「ぶー。つまんないの」
「つまるつまらないじゃないだろ。ったく。それにそれも結構奮発したんだぞ」
「ふふ、嘘。嬉しいよ。ジークが頑張って選んでくれたんだし、ね」
「んの馬鹿野郎!」
掴みかかったが、秋水は笑いながら逃げるだけだった。

「あー、その、マリア……」
「なーに、仁? そろそろランニングよ」
ごそごそとポケットから飴を取り出した。
「何つーか、貰いっぱなしじゃ男がすたるからな」
そっぽを向きながら、ぶっきらぼうにそれを手渡す。
それを受け取って、微かに赤くなりながら、いつもの委員長口調であしらう。
「ふーん。でもテスト勉強から逃げる方が男らしくないわよ」
「地球を狙う敵からは逃げなかったからいいんだよ!」
「ふふ、そうね。でも、平和になったしもうすぐ6年生なんだから、ちゃんと勉強もするのよ」
「ホント口うるさいよなー、お前」
「あら、うるさいだけじゃないわよ。ありがとう、仁」
マリアがにっこり笑うと、真っ赤になって駆け出す。
「ばっきゃろー! 何笑ってんだ! それに礼なんて言ってんじゃねー! ほら、ランニング行くぞ!」
「こら、待ちなさいよ!」

 

GCジー秋。XOだと光珠ちゃん(読みは同じであきみ)になるんですが、未プレイなので。箱ほすぃ。同級生の子も出るのに。
大好きなカップリングなのに公式の絶対無敵ぶりになかなか書けなかったのですが、季節ネタなら対抗できる、と!
しかし「かっちーん!」とか漫画的なウザ可愛い(褒めています)秋水ちゃん口調はなかなか書きにくい。それ以外も色々と。
そしてライジンオー大好きなので、そのネタも一緒に。タイトルもそれ風にしてみました。授業中でも出動OK?
でも冒頭のネタだけのつもりだったのになぁ。吼児君の語り、こんな感じですよね?
サリーちゃんに告白しようと思っている子は男秋水君、のつもり。My設定では従兄弟なの。多分読みはしゅうすい君になる。
多分うまくいくんじゃないかな? とにかく、ここでは珍しいラブ甘SS。流石バンプレオリ屈指のバカップル。仁とマリアもラブラブだよねー。

 

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