情報部へようこそ!

ヴィレッタは今情報部の手伝いをしている。
ギリアムのチームは彼女のことをよく理解し、尊敬し、親しくしている。
「ヴィレッタ大尉、この案件で不自然なデータがあるのですが」
「助かりました、ヴィレッタ大尉」
「皆さん、コーヒーが入りました。ヴィレッタ大尉には特別にお菓子です!」
「ヴィレッタ大尉がいて良かった! 救いの女神! 天使!」
「お前たち、あまりヴィレッタを困らせるんじゃない」
呆れるギリアムもどこか楽しげだ。

だがそれはヴィレッタが飽くまでSRXチームの隊長で、たまに手伝いをしにきているからだ。

彼らは適性や程度こそ違えどいずれも優秀だ。
オーバーワーク気味とはいえ、ヴィレッタがいなくても上手くやる。
そして優秀故にオーバーワークになってしまうため、ヴィレッタを頼りにしている。
完全な身内であれば、ここまで尊敬はされないであろう。
ギリアムがパイロットとしてSRXチームの演習相手になったり指導をしにくるのがとてもありがたいのと同じことだ。
彼は根本的にはパイロットだ。ただ束の間とはいえ平和な時にはその適性はあまり活かせない。
優秀だが人を指導するにはあまり向いていない。
人望自体はあるし言葉も腕前も駆使するのだが、悪く言えば非常識、悪く言えば人間離れしている――どう言葉を尽くしても悪口になってしまうのだが、とにかく常人とは違う。
故にもうひとつの適性の情報収集を駆使している。
ヴィレッタは指導者の適性がある。
情報収集の方が向いているが、お互いにそれでいいと思っている。
だから助け合っている。お互いの適性をより良く平和のために活かせるように。

「ヴィレッタ大尉、少しいいかね」
「何でしょうか、ジェイコブ中将」
彼は情報部の責任者だ。
「何、君という美しい女性とひと時の語らいを過ごしたくてね。ギリアム、いいか?」
「俺が口出しすることでもないでしょう。あまりやりすぎないようにお願いしますよ」
ギリアムの直接の上官だが、ギリアムの言葉は少し崩れている。
こちらの方が彼の部下として適切な言葉遣いだと知っているからだ。
ヴィレッタは執務室に呼ばれて行った。

「かけたまえ。ゆっくりこの逢瀬を楽しもうじゃないか」
「……ご用件は?」
食えない人物だ。不敵でかつては優秀な工作員だった実績もあり、今の地位も頷ける。
「いや、君をギリアムのパートナーとしてスカウトしたくてね」
「中将、その話は何度もお断りしたはずですが? 確かに私は情報部としての適性があります。しかしSRXチームの隊長こそが私の使命です」
「ふふ、わかっている。そういう意味じゃない……男女としてのパートナーさ」
時が止まった。
いくら高官で色恋沙汰が好きとはいえ、限度がある。
しかしここで適切な言動とは何だろうか。
「中将、失礼ながらそれは不適切な発言です。彼にも私にも相手を選ぶ権利があり、上官とはいえプライベートに口出しするべきではないと思いますが」
「選んでいるだろう? お互いにさ」
本当に食えない。
ギリアムが上手く扱われるのも当然だ。
彼が好きな人種で、苦手な人種だ。
「いやー、私もギリアムには困っているのだよ。あまりにも多くの女性を不幸にしている。いくらプライベートのこととはいえ、上官として指導すべきことはすべきではないか」
「ギリアム少佐はそうですが、私は中将の部下ではありません」
「その通りだ。すまないな。だがこの点だけは私がいくら指導しても上手くいかなくてな。君が言ってあげた方が理解してもらえると思うのだ」
「……ギリアム少佐はそういう人です。彼の良さは中将の方がよくわかっているのでは? 才能を潰すべきではありません」
「というと?」
「彼に恋人が出来たら、他の女性に上手く愛を囁けません。失敗のリスクが増えます」
「確かにな」
「彼が家庭をもって父親になったとしたら? きっと彼は今ほど任務に打ち込めないでしょう」
「それでいいではないか」
本当に食えない。よくわかっている。
「忘れてはいけない。我々は平和のために戦っているのだ。戦い続けて世界が本当に平和になったとき……ギリアムには何が残るのだろうね?」
「共に戦った仲間との穏やかな暮らしが残ります」
「素晴らしい答えだ。本当に君は素晴らしい。女性として、人間として、これ以上の人はいないな。美しく聡明で……全く、ギリアムが羨ましいよ」
「お話は以上でしょうか」
「ああ、ありがとう。退室したまえ。つまらない話をしてしまった。すまないな」

「ヴィレッタ大尉ー! 中将にセクハラされませんでした!?」
「少しね」
光次郎に苦笑いする。元々陽気だが、敢えてこういう言動をする人物だ。
「少し!? 大丈夫ですか! 触られませんでした!? 愛を囁かれませんでした!?」
「あなたはされているの? サイカ」
「え、えっと……触られてはいないです。口説かれてはいますがああいう人ですし……」
サイカは新米で紅一点だ。未熟だが、こういう存在も必要だ。
「凄い人なんですけどね……もうちょっと偉い人らしく真面目にやってくれないんでしょうか……」
怜次のフォローはフォローになっていない。それでもフォローする。
「お疲れ様です。コーヒーを入れ直しましょうか」
壇は話をまとめ転換させる。
「済まないな。ヴィレッタ。今度SRXチームの手伝いにいく。予定は今度打ち合わせよう」
「ありがとう、ギリアム少佐」
だから上手くいく。そういう関係だ。
「ならその打ち合わせはどこかのお店でしましょうか? 喫茶店かしらね? バーもいいかもね」
「ヒュー! ヴィレッタ大尉やるぅ!」
「ダメです先輩! 邪魔しちゃいけません! 暖かく見守るべきです!」
「……楽しそうだな」
「楽しそうですね」
「やれやれ。君の要望はわかった。善処しよう」

彼らはいい関係である。

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情報部です。ギリヴィレです。我ながら平常運転すぎます。
相変わらずのサイカちゃん=ハッカーさん設定です。
八房先生偉大ですね……本編には絶対出せない点も含めて凄いです←
そしてそこにギリアムの上官として用意されたジェイコブ中将、凄いです。竹田さん凄い。
OGINのモブ情報部が「ギリアム少佐とヴィレッタ大尉、驚くだろうな」とか言ってるあたりどれだけ入り浸ってるんでしょうね。
非公式カプなのに公式最大手すぎてちょっと理解が追いつかないです←

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