因果律の向こう側

使命とプログラムと意思の一致で、俺は地球に降り立った。
この世界は存在するべきではないと直感した。

因子は1つでは意味がない。
因子の関わりが因果を作り、結果を出す。
この世界のすべての因子は終焉のために存在している。
別の世界であればまた違う結果が出るだろうが、この世界においては終焉への因子にしかならない。
俺という存在もその1つだ。

理解すれば枷は意味を持たなかった。
抗う。

念動力者を初めとする対抗力の育成はとてもうまくいっていた。
それすらも終焉を呼ぶが、彼らの笑い声は俺の救いだった。
抗う力をつけた。

抗うために理解しなければならなかった。
システムXN。
理論や能書きを読むまでもなくその名称の意味は1つ――次元転移装置。
そしてそのとおりの解説がついていた。

「会いにきてくれて光栄だ、イングラム・プリスケン」
悪意の正体は神の名を騙り仮面をつけ、何の感情も伴わずそう思ったという事実を若い男の声で述べた。
「私もT-LINKシステムについて話を聞きたかった。思念を集め増幅する装置、素晴らしい」
「あれは貴様には扱えない」
「適正がない。意思も力がなければ行使できないという現実だ」
事実を述べただけの言葉には強い憎悪が籠もっていた。
「私のことを消してもらっても構わないが、実験の結果を待って欲しい」
淡々と強く願っていた。
「見たいだろう」
そして事実を告げた。

危険極まりない存在だ。
「その実験の結果がどうなるかはお前にはあまり意味を持たない」
そのとおりだ。
何が起きたとしても、それは結局終焉を導く因子にしかならない。
「他の世界がどうなるかにも」
そして実験している。
俺が何をするのかを。

その存在を放置した。
起動実験に失敗し、制御装置の1つであり主任研究者である男が消滅したと聞かされた。
俺はそれを聞いてあの男は実験に成功したのだと確信した。
次元転移装置を完成させる目的など「別の世界に行く」以外に有り得ず、他者を送るか自身を送るかの違いしかない。

己の目的を表す単純明確な名称をつける男は神の名を好んだ。
調べればすぐに意図がわかる。
太陽神、道、疾病。
太陽は照らすと同時に焼き尽くす。
本命の装置は己が他の世界へ行くための道でしかない。
理論を応用して他者に造られた兵器に疾病の名を与えた。
制御装置の一部が欠落した以上完全な転移が出来るはずもないが、大規模な転移が行える。
転移の際に欠落するものも多く、不規則にあらゆる世界に戦争を起こす。
悪意か悲鳴かは関係ないが、明確な意図が込められていた。

「哀れだな」
そう思ったという事実が口から飛び出した。
実験の結果、世界がどうなるかに意味を見いださないという我の強さ。
共感の力である念動力が扱えるはずがない。
それを理解し自己への酷い憎悪を抱き、それでもなお我を貫いた男もまた、終焉に抗おうとしていた。
終焉の世界から逃げることに成功した。
この世界でなければ別の結果を導き出し得る意思と力を持っていた。
ここは何もかもを狂わせて全ての世界を終焉させるための世界だ。
悪意しかない世界。
抗うしかない。
何も知らず笑い戦い抜く彼らを守り抗い続ける。

あらゆる因子が別の終焉の因子を呼ぶ世界で、どの世界においても破滅しか呼びえない存在が生まれた。
それが別の世界に向かう道中で、リュウセイの断末魔という結果を出して、忘れたはずの涙が溢れた。

その存在――ベーオウルフも結局は因子の1つにしか過ぎず、この絶望しかない世界を出れば何ら意味を持たない。
破滅のみのために存在する因子は別の世界では己の破滅という結果しか出せない。
全ての因子に存在を否定されることになる。

この世界で抗い続ける。
終焉を迎えるべきでない存在が、救いが、意思が消されていく。
消されきってはいない。
抗いぬいてみせる。

 

—————

 

『因果律の番人』モード全開の向こう側イングラムです。
α世界でのイングラムvsギリアム書いたので『向こう側』を書こうかな、と改めて見直したのですが、酷すぎますね。
GBA版OG2から更にグレードアップした鬱展開と死亡フラグしかないOGsでの記述。
ヴィンデルさんは「世界が少しずつおかしくなっていった」と供述していますが、最初から酷かったとしか思えないです。
「紆余曲折ありつつ異星人との戦いのためにロールアウトした」とOGsで記述されたSRXはOGIN冒頭でアインスケさんにゴミにされています。
因果律の番人として以上にイングラム隊長としてもアレすぎます。
ユーゼスはイングラムと関わった時点で破滅するのが確定しているので(この人はこの人でブレなさすぎる)こうどうでもいいというか。
なのでヘリオスさんの存在もイングラムにとってはゴミ以下です。
ゴミを見る眼で供述しているので、割と酷い言い草です。
ヘリオスさんの実際の想いはその後の彼自身が語っているとおりですが知ったことじゃないので通過点です。
正直SHO以上にイングラムのための実験室のフラスコしていると思えてしまう酷さです。勝って欲しいです

テキストのコピーはできません。