クロスゲート・ディメンション

観測システムに声をかけた。
「ようやく役に立ってくれたな。力なき鍵よ」
答えのあるはずもない。人の姿をしているが、それだけの部品だ。
「そして、お前もそうなる」
真の目的、クロスゲート・パラダイム・システムがこの世界に現れたのを捉え、回収に向かった。

ーー地球に存在するサイコドライバーの能力を開花させ、回収する。
「っ……」
イングラムは与えられたプログラムに抗おうとする。
この世界のユーゼスに先手を打たれ、活動を開始する前に回収され洗脳された。
自我はある。しかし抗うほどの力はない。
あの世界では仲間との繋がりにより本来のプログラム、ユーゼスのクローンであり操り人形としての本能に抗い打倒した。
その後因果律を歪める元凶を追い求め並行世界を渡ったが、どの世界のユーゼスも並行世界の記憶を持っていた。
そしてイングラムを利用しようとした。
その度に打倒してきたが、記憶を引き継ぎユーゼスは強くなっていった。
そういった記憶はある。使命感もある。
だがこの世界においては何の力も持たない。
単なる記憶だ。彼らとの繋がりが何もない以上、イングラムをプログラムから解放することは出来ない。
「リュウセイ……ライ……アヤ……」
思い出せる人間も少なくなってきた。いずれこの自我も消される。
「イングラム、そうはならない」
声がした。
「何者だ、貴様!?」
プログラムと自我の両方がその言葉を発した。
「……並行する世界をさまよう宿命を背負った者……」
声の正体は男。しかし記憶には存在しない。
「……だが……ここで終わるかもしれない……」
因果律の番人としての力がその言葉を真実だと察する。
何より、その男と彼は同じだと直感した。
「…………お前の目的は何だ?」
イングラムは自らの意思でそう尋ねた。
「わからない……全て消された……残された時間もない……」
それも同じだった。虚ろな青い両目に宿る意志はひどく弱い。
「……だから、お前の目的がこの世界の俺の目的だということにする……」
苦しんでいた。必死で抗おうとしていた。
「何をすればいい?」
引き出す。似て非なる者の力を。
「もうひとりのお前を、ヴィレッタ・プリスケンを呼び出せ」
ヴィレッタ。会ったことはないが、知っている。
「……器を作り、名を与える……彼女が力になってくれる……」
言葉はそこまでだった。
苦痛も意思も感じられなくなった男は、振り返ることもなく静かにその場を去った。
「ユーゼス、俺も奴もお前の思う通りにはいかないようだぞ」
プログラムから解放されていた。しかしこれも一時的なものだ。
クロスゲート・パラダイム・システムを起動した。

ユーゼスと同じことをした。
この世界のイングラムはバルシェムシリーズの1号体、アウレフ・バルシェムとすり替えられている。
今のバルシェムシリーズは本来の設計意図から逸れ、イングラムの複製体として造られている。
2号体、ヴェート・バルシェムをユーゼスの命令で動く人形ではなく純粋な『イングラムの複製体』とすり替えた。
ユーゼスもまたヴェート・バルシェムを『ヴィレッタ・プリスケン』として造ろうとしていた。
ユーゼスの意図は全て読める。それに従い動くように造られたのだから。
そして計画通りにはいかせない。
決意したが、わからないことがあった。
イングラムに言葉をかけたあの男は何者だったのか。
並行世界を渡り、今はユーゼスに操られその力を利用されている。それはわかる。
その力が何なのか突き止めなければ、真にユーゼスを阻止することにはならない。

「久しぶりだな」
声をかけると意思のある眼がイングラムを見た。
「……うまくいっているようだな」
表情は変わらないが、少し笑ったような声だった。
「聞きたいことがある。お前についてだ」
「観測システム、ユーゼスはそう呼んでいる」
「因果律予測か」
「……次元歪曲・転移……」
あの世界のユーゼスやイングラムのように、因果律を操作すれば自然と次元を操る力を持つようになる。
「……Xナンバーディメンション……その実現の1つの形、その一部……」
理論も知っている。知識はこれ以上引き出すことは出来そうにない。
「お前を殺してやる」
銃口を向けると、笑って頷いた。
「ユーゼスの力を削ぐ必要がある。それに……これが最後なのだろう」
「頼む」
「だがお前を単なる観測システムでは終わらせない。曖昧でも構わない、力ではなく記憶を話せ。俺もいずれ消えるが無意味にはならない。わかるはずだ」
彼が何者なのかを虚ろな表情で語り出した。
「……どこかにある……俺の帰りたい世界が……在るべき世界が……何者かによって造られた実験室のフラスコ……実験、動物でもいいから、いきていたい……だれかと……ここはそうでは、なかった……」
苦痛に歪んでいる。
「この世界にもお前が現れた意味があった。俺と出会うことだ」
静かに宣言して、引き金に手をかけた。
「また、どこかで」
その遺言はイングラムのみ聞いて、観測システムですらないただの物になった。
自殺を偽装した。最後に抗ったのだとユーゼスに示すために。

考えていた。イングラムが生まれたのはユーゼスの造った虚構の世界。
その世界が消えてもイングラムは消えなかった。
『因果律の番人』が存在意義だと思っていたが、それだけなら意思は必要なかった。
「リュウセイ、ライ、アヤ……ヴィレッタ」
ここではないかもしれない。どこにもないかもしれない。
だが、巡り会う宿命がある。
決別はあるだろう。しかし次はもっと意味のある出会いを。
「どこかで」

 

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捏造と趣味しかないですね!
イングラムとユーゼスとヴィレッタと彼の話でした。
全機能利用するために両目出ています。
αは結構キーワードが出てくるんですよね。
OGの彼とユーゼスとイングラムも「どこかで会ったような」レベルじゃない因縁がありそげですよね!
出てこないだけでいた、と考えるのが妥当なのであとはあれこれ理屈をつけてみました。
OGはやっと因子が揃いましたが続き見られるんですかね……

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