■魔剣の系譜

フレデリクは任務を愛している。
しかし騎士団長としての任務に追われ、家庭の長としての任務を疎かにしてしまうのは、主であり愛する人であるリズとその間に生まれたウードに申し訳が立たなかった。
愛と任務を両立出来ないのも、また任務故である。
馬をより速く駆った。

家の扉を開いた。
「ただいま帰りました」
「もう、フレデリクー! 遅かったじゃない!」
リズが飛びついてきた。昔と変わらず元気で愛しい人だが、大人になった。
「すみません、リズさん。任務が多く……ウードはもう寝ていますね」
「寝てないよー! ひどいんだよー!」
おや、と思った。
いつもより遅い時間だ。幼い子供は寝るのが早く、いつも帰る頃には眠っている。
起きている姿を見るのは嬉しいが、リズと楽しそうにしている時はともかく、明らかに眠いのに待っていた時は嬉しくも胸を締め付けられた。
「寝る前のお話、飽きちゃったみたい。ひどい! ウードのバカ! 母さんが色々探して話してるのに!」
「なるほど、わかりました。では男の子が喜ぶカッコいい話を私がしましょう」

寝室に行くとウードが飛びついてきた。
「父さん! おかえり!」
「お待たせしました、ウード。お母さんと一緒にお父さんの知っているカッコいい話を聞いて下さい」
「カッコいいはなし!? すごい、きかせて!」
「カッコいい騎士のお話です。『獅子王エルトシャン』」

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むかしむかし、悪い竜が人々を苦しめ、いい竜たちが人に力を貸しました。
12の竜の力が込められた神器により、悪い竜は倒されました。
神器の1つが『魔剣ミストルティン』
全てを斬る必殺の魔剣です。
黒騎士ヘズルに与えられた魔剣は、その子孫に受け継がれていきました。
魔剣ミストルティンを使う伝説の騎士の1人が獅子王エルトシャンです。
エルトシャンは騎士の中の騎士です。
主が民を苦しめていることに心を痛め、何度も訴えました。
主は民を苦しめ続けました。酷くなる一方でした。
エルトシャンにも酷い命令を出しました。
同じく騎士であり夢を語り合った親友と戦わせたのです。
親友はエルトシャンを説得しました。ですが騎士として主を裏切る訳にはいきません。
見かねたエルトシャンの妹、ラケシスがエルトシャンを説得しました。
正しい主の正しい命令に従うのが騎士の役目。
命令に背いてでも間違った主を正しくすることこそ、真の騎士の行いだと。
エルトシャンは主の城に向かい、正そうとしました。
エルトシャンは主に殺され、首をさらされてしまいました。
それが獅子王エルトシャンの最期でした。

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「ひどい! どこがカッコいいんだよ! 悲しい話じゃん! 全然カッコよくない! ウードも凄く泣いてるし!」
話を聞いている間にも涙を流していたウードは、声にならないまま涙を振るわせていた。
「悲しかったですね、ウード」
「うん、うん……悲しい……でも、カッコいい……エルトシャンカッコいい……」
「えー!? な、何なの!? 男の子ってこういうのが好きなの!?」
「ウードも騎士ですねぇ。良かった良かった」
「よくない! わかんないよー!」

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ウードはフレデリクが帰るのを楽しみにしていた。
聞いている途中で眠ってしまうこともあった。
帰ったらリズの傍で寝ていることもあった。
様々な騎士の話をした――悲劇も、喜劇も。

「たまにはウードが聞きたい話をしましょう。どういう話がいいですか?」
「獅子王エルトシャンの話がいい!」
注文は多岐多数だが、だいたいこうなる。
聖騎士シグルドとの、聖光の槍騎士キュアンとの、様々な物語を語った。
少し早いかもしれないが、今回はこの話をしよう。
「それでは今日は獅子王エルトシャンの子供のお話をします。『黒騎士アレス』」

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エルトシャンにはアレスという子供がいました。
アレスもまた魔剣ミストルティンを受け継ぎ戦っていました。
アレスは主を持たず思うがままに戦い、愛する人のために敵を斬り続けました。
シグルドの子供とキュアンの子供、そして愛する人と戦いました。
復活した悪い竜は再び倒され、アレスは愛する人と幸せに暮らしました。
アレスには主はいませんが、皆が騎士の中の騎士と称え、先祖であるヘズルの黒騎士という名で呼びました。

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「おー、カッコいいねー! いいじゃんアレス! エルトシャンよりカッコいい!」
「カッコいいですよね、ウード」
「う、うん……カッコいいけど、よくわからない。なんだろ……」
「今日のお話はここまでです。おやすみなさい、ウード」
「おやすみ……父さん、母さん……」

安らかな寝息を立てている。
親たちは笑いあった。
「ウードには早かったね」
「まあ早いだろうとは思いましたが」
「うー、こう、不安なんだよね……フレデリクの子供だよ? 早くない時が見つからないよ? というかお兄ちゃんもこう、アレだったし……」
「でもウードが生まれたしルキナが生まれましたよ」
「それもそうだね……うー、でも母さん心配! 将来が楽しみだけど不安だよー!」
「大丈夫です。私たちの子供なら、きっと」

 

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フレリズとウードです。
リズ支援も他のも色々好きなのがありますし、ミステルトィン的にロンクーや地味に蒼炎を御伽噺として知っているドニもいいです。
ただフレデリクさんの支援はリズが一番いいしロンクーは別の魔剣の話も混ぜると思います。
地の文で済ませてますがフレデリクさんの実際のお話はミステルトィンの凄さを超絶盛りまくってます←
あとシャガールが凄まじい暗君になってます。お話なんてそんなものです。

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