情熱の赤

號が珍しく自室にも格納庫にもいない。
シティ7への外出許可が出たので一緒に出掛けようかと思ったのだが。
――別にデートとかじゃないんだからね! ルーもミカもジュンもからかいすぎ!
凱はいるがゲッターチームで1人欠けて行動するというのもおかしなものだ。
凱も號の居場所については心当たりがないという。
そして渓にとってもこの2箇所以外に號がいそうな場所といえば食事時の食堂くらいしか思いつかない。
――何なのよアイツ。私を守るって言っておきながら……
そんな不満を内に留めつつ結局その日はゲッターの調整で一日を過ごした。
夕時になって、ようやく號が姿を現した。
――赤い薔薇の花束を手に。
「って、號、それどうしたの!?」
「女は花を喜ぶものと聞いた。シティ7への外出許可が出たのでお前の心が和らげばと思って買ってきたのだが……」
渓は酸素不足の魚の如く口をぱくぱくさせる。
「な、何で赤い薔薇なの!?」
「どの花がいいのかわからんので店員に選んでもらった」
勿論それは用途などに合わせて選んだものであろう。
どんな説明をしたものか興味深い所ではあるが。
「……あんた赤い薔薇の意味わかってないわよね」
「いや、知っているぞ。ずっと一緒に、永遠に支えるという誓いの花だろう」
愛の告白を號流に解釈するとこうなるのか。
感心するがやはり渓の認識とは齟齬があって。
「俺はお前を守る。これから先、何があっても。その誓いの証明としては悪くないと思ったのだが」
――それでもその感情は恋愛感情に基づいたものではない。
それが少し悔しくもあり、嬉しくもある。
たとえ恋愛感情でなくても、號は赤い薔薇を選んでくれたのだ。
それが彼の心の行き先を示してくれるものに思えて。
「……ありがと。號。枯らさないように大事にするよ。でも外出する時は言ってね。私も一緒に出かけたかったんだから」
「そうか、すまなかった」
「あんた謝れるようになったのねぇ……」
感慨深く花束を胸に抱く。
「號、凱、次の外出許可の時は一緒に出掛けようよ。お揃いのアクセサリーとか欲しくない? 勿論ゲッターが私たちの一番の絆だけどさ」
「何か俺の居場所がない気がするんだが……」
「気のせいよ、凱。あんたも大事なチームメイトなんだから」
「ハハ……ハァ」
渓への片想いが通じないまま號に掻っ攫われた格好になる凱は諦めがついているとはいえ乾いた笑いを上げるしかなかった。
それもこれも渓の女としての自覚が足りないせいだ。裸を恥じるくらいの分別はあるが恋愛感情というものとは無縁で来たのに號の出現で渓は曲がりなりにも恋愛感情と呼べるものを持つようになった。
凱ではダメだった。それだけのこと。諦めはとうについているが男として悲しくなる。
「楽しみだな、次の外出! それまではお仕事バリバリ頑張らないとね!」
「ああ。俺も何に変えてもお前を守る」
「赤い薔薇渡された後だと照れちゃうわね……」
「薔薇がダメなら他のどの花なら良かったんだ?」
「わ、私花とか全然詳しくないし! わかんないよそんなの!」
詳しくない渓が唯一知っていたのが赤い薔薇の意味だけだっただけのこと。
それを考えれば適切な贈り物と言えなくもない。
「でも……花かぁ。これまでの人生花とは無縁だったから正直戸惑うけど嬉しいよ。ありがと、號」
「お前が喜んでくれたのなら良かった。俺は……お前を守る。お前の心も」
「……だから2人の世界作るのやめてくれよぉ……」
格納庫で薔薇の花畑を抱えた笑顔の渓と微笑を浮かべる號、そして少し嫌気が差したという風情の凱は遠巻きに見守られていた。
少なくとも翌日以降にブルー・スウェアの女性メンバーから渓がからかわれるネタに事欠かなくなったのは事実であろう。
そして。
「弁慶、何泣いてやがる」
「笑うなら笑え。一応渓は俺の娘なんだ。あいつの成長とこのまま號に渡していいものかという葛藤で涙しか出ん」
「俺たち年寄りが口を挟むことでもないだろう。たとえお前が渓の父親でもな」
「俺は一応17歳のままなんだが……まあ隼人に同意だな。お前はただ見守ってやれ、弁慶」
「わかっちゃいる……わかっちゃいるんだ!」
弁慶の男泣きもしばらく続くことになりそうだ。

 

スパロボワンライ、お題チェンゲということで久々にゴウケイです。大好きなのに鉄ジュンの導入部以外ではホント久々w
フリーワードの人外限定も長命種×人造人間的な意味で気になったのですがw
Dからチェンゲを知ったのとからかわれ萌え拗らせてるのと2人の精神コマンドの関係性と原作よりやや恋愛寄りに描かれてるかな?的な感じでゴウケイといえばD世界だったりします。
いつもの傾向と別の感じにしようかな、と敢えてルーたちを出さずに雰囲気を変えようと試みたのですが結局いつもの私のゴウケイな気がしてならないw

 

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