100年後の未来も、きっと明るくて

DC戦争からはじまり、数多の並行世界を巻き込んだ一連の戦いが終結してから6年が経った。
「お久し振りです、そしておめでとうございます」
エルザムは微笑んだ。
「この目出度き時に呼んでくださること、旧交を温め合えること、誠に僥倖」
ゼンガーも頷いた。
カイの娘・ミナの結婚が決まり式の段取りをする所で彼以上の料理人が思い浮かばず、ミナにとっても知らぬ相手でもないため、エルザムに料理のことを全て任せることにしたのだ。
「それで……お前たちもギリアムの行方はわからないのか?」
もう1人の戦友は戦後処理を終えた後軍を去り、エルザムたち同様隠遁生活を送っているはずだったが、連絡がつかない。
「コールには応答がなく、住まいとして聞いていた家は手入れはされているのですが本人の姿はなく……」
「……並行世界に旅立ったのかもしれん」
この世界の者ではない――と言うと縁起でもないが、ギリアム本人の来歴と、鋼龍戦隊のメンバーにもそうして別れを告げた者はいたため納得の出来る理由ではある。
「俺たちに何も言わず、か。あいつらしいと言えばらしいが、こうも簡単にな」
湿っぽくなった所にミナとその結婚相手、そして式場のアドバイザーが来たため笑顔を作った。

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「…………これで、いい」
祝辞を記した手紙に封をして、ギリアムは独り呟いた。
――自分は式の当日を迎える前に、この世界から消えてしまう。
その予知は時を追うごとに確実性を増して見えて、何か手を打たねばならないと考えた。
世界を渡った後のことは今考えるべきではない。外患誘致の未来の確約と共にこの世界に来た時に比べれば生ぬるいものだろう。
「大丈夫、その未来は輝いている……100年後も、ずっと」
彼らとその子らが紡ぐ未来に想いを馳せて笑った。
「……ああ、駄目だな……表書きが滲んでいる……雨に晒してしまったかな……」
その未来に自分がいないことも慣れているが、何故か雨は降り止まなかった。

 

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第119回2代目フリーワンライから『生ぬるい』『百年後に会いましょう』『今回ばかりは』『文字の滲みは雨だから』でギリアム中心の……その、ごめんなさい!な奴です。
使わなかったお題に『切り札は取っておく』があってこれはキョウスケ、と思ったんですがそれ以上に『百年後に会いましょう』のインパクトが強かったです。
Fで「100年後、我々は生きていないでしょうが……冗談はさておき」という台詞ありましたし、4次のED的にも呪われし放浪者的にもOGでも失踪しそうな、でこんなSSです。
自分で書いておいて良心が痛む……OG世界では幸せになってほしいな……

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