■モノクロームからの幸せ

私には生と死と戦いしかない。
幼かった私は両親を殺され故郷は虐殺に満ちた破滅を迎えた。
私を救った鳥人族は私に銀河の守護者という使命を与えた。
彼らもまた虐殺された。
アダムと出会い惹かれたが彼も死んだ。
出会った人たちは皆死んでいく。
生と死。白と黒。0と1。世界はそれだけしかない。
銀河の守護者の力と使命、私自身の意思はそれを覆すことなど出来はしない。
誰かに出会いたかった。
いずれ死ぬ存在とわかっていても、1人では生きられないから。

別の世界に呼び出された。
今の私は玩具に私の意思と力を込めただけのものであり、本来の私ではない。
そう支配者に告げられても実感が湧かなかった。
私は私だ。私の記憶を持ち心を持つ。力も当然ある。
ただ、明らかに違う点があった。
仲間たちは死ぬことがなかった。
玩具の世界というのが本当かはわからない。
ただ、彼らもまた別の世界の強い力と心を持っていた。
マリオはヒーローだ。
小太りして抜けた所があるが、医療や芸術を含めたあらゆる強さを持っていた。
ピカチュウは可愛い。
愛想がよく表情豊かで、敵に対しては意地悪に笑い強い電撃を放つ。
ネスは優しい普通の男の子だ。
超能力を持つが『カッコいいもの』と『癒し』が本質で、怯えているが戦い抜く強さと優しさを持っていた。

そしてキャプテン・ファルコンは。
バウンティ・ハンターだ。銀河を蝕む病毒を排除し金を得る。
私もバウンティ・ハンターだ。金などかからなくてもやるが、金がなくては生きていけない。
彼の力は火焔だった。
銃器を使う。炎の拳を打ち込む。
何ら特別な力ではないが、稼ぐ賞金は私と同等だった。

私は理解した。
世界は0と1で構成されている。
0と1が無限に絡まり心と強さと繋がりを持つ。
その繋がりは仲間であり敵であり、守るべき市民である。
私が今の仲間たちに劣る所があるとすれば、心だ。
私はまだ、虐殺に怯える幼い少女のままだった。
虐殺を繰り返させないために戦っていた。
その恐怖は私の強さの本質だ。
ただ、繋がりを軽視していた。所詮孤独だと諦めていた。
優しく強い仲間たちが殺されていったのは、私の諦めのせいだったかもしれない。
死は避けられない。戦士であれば尚更だ。
だが彼らの強さを軽視し諦めていたのは事実だ。
どこまでも傲慢だった。

涙が溢れた。
今まで抑えていた死への痛みと恐怖と、何よりも強い自己嫌悪が溢れて止まらなかった。
止める気もなく、ひたすら嗚咽した。

泣き止むと日常があった。
談話し、喧嘩していた。
ドンキーが私にバナナを1本差し出した。
「ありがとう、ドンキー」
バナナを食べずにはいられない彼がそれを渡すという優しさに感謝した。
「美味しい」
ドンキーは喜んでいた。ドラミングまでしていた。
次々と差し出してきた。
「嬉しいけど、3本まででいいわ。後はあなたが食べて」
少し拍子抜けした顔をしたが、すぐに大喜びしてそうした。
食べ物を美味しい、と思って口にしたことがあっただろうか。
あったはずなのに忘れていた。
また1つ自己嫌悪した。
何のために戦うのかを知らなかった。
皆幸せになるために戦っている。
両親は私が幸せになることを願いながら殺されただろう。
蹂躙は奴らにとっての幸福だ。
私は皆が団欒し食事を美味しいと思えるようにこの力を使う。

ひとりで部屋に籠もっていたせいか皆がそれぞれに心配していた。
ありがとう。大丈夫。ごめんね、と繰り返した後に、笑いあって美味しい食事をした。

 

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言葉お題「白黒」「焔」「幸せ」を使って小説を書く、をいただき64サムスを書きました。
ファルサム絡まないサムスありましたかね? まあこの小説もファルサムなんですがw
こういうのも面白いですね。

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