■呪いの系譜

サーリャは実家に手紙を書いていた。
呪わせるために呪って世代を繰り返し呪い続けた、ペレジアの歴史の1つとも言える呪術師の家。
サーリャの誇りであり、どこにいても連絡が取れる。
伝えたいことを紙に文字として記し送り読んでもらう、これも連絡の呪いの1つだ。
サーリャの所属はイーリス軍でペレジアとは敵対関係だが何ひとつ問題はない。
イーリス聖王クロムが直接指揮を執っているが正規軍ではなく、そもそもサーリャにとってはクロムの半身である軍師ルフレを愛しているがためにルフレの味方をしているというだけだ。
サーリャの実家にとってのペレジアもそうであり、ただ呪術を実践しつづけるためにペレジアを利用している。
呪いは何よりも強い。

行軍続きで少し間隔が空いてしまったが、書かなくてはならなかった。
娘としての義務である結婚の報告であり、呪術師の家の1人としての義務として強い呪いを報告するために。
認めたくはないが認めざるを得ない。
ヘンリーはサーリャを上回る呪術師であり、愛しあう呪いをかけられ結婚した。
ヘンリーの呪術師としての力の根本は純粋さだ。
何の理論も知らず純粋に呪う。
理論を知ったら今ほどは呪えないし知る気もなく、そもそもわかるはずもない。
運命とも思える呪術師の才だ。
薄っぺらい笑顔だが心の底から笑っている。
怒れば軽く怖いと言うし心から言っているが、それ以上に笑っている。
好きだ、嬉しい、お願いを聞く、だから好きになって、結婚して。
純粋極まりない軽薄な響きを繰り返され、呪われてしまった。
その事実を結婚の報告として純粋な言葉で書き綴り送った。

しばらくして返事が来た。
親であり尊敬する呪術師である人からの純粋な呪いの手紙だ。
祝福が記してあった。
ヘンリーはペレジアの呪術師の間では有名だ。
魔力と呪術の素養に溢れた、謎多き銀髪の少年。
この家では絶対に生まれるはずのない呪術師が家の者になる事が素晴らしいとあった。
サーリャが誇らしいと書いてあった。
呪われてしまったのは悔しいだろうけれど、そもそもヘンリーがサーリャを呪うようになったのはサーリャが呪い成就したからだ、と。
呪いは心だ。純粋な心ほど強い呪いになる。
純粋に呪えるようにサーリャを呪い、理論と実践で呪い続けた。
ルフレを愛しながらヘンリーを無意識に純粋に呪った。
その結果がこの結婚だ。
心は呪いを生み、呪いは愛より強いが、愛とは何よりも強い心であり、純粋な愛からの呪いに勝てるものなど存在しない。
サーリャとヘンリーを擁する軍は必ず勝つ。
これからも愛しあって呪い続けてほしい、と締められていた。

サーリャが一番愛する人はルフレだと断言出来る。純粋な愛だ。
ただそれは異性として結ばれるという愛ではなかったのかもしれない、と感じた。
ヘンリーに結婚の条件として『サーリャとルフレが両方危機に落ちたらルフレを守れ』と提示し、ヘンリーは実に軽々しく承諾し、簡単なお願いで良かったと喜々として指輪を作ろうと笑った。
サーリャも当然ルフレを守る。天秤にかけるまでもない。
ただ、異性として結ばれるということは互いの存在に未練を持つということだ。
未練があっては呪いは力を持たない。
自分を犠牲にしてでも救う、究極の愛であり呪いだ。
ルフレを生かすためなら死んでもいいとは思う。心の底から断言出来る。
ただ現状では「死んでもいい」だ。
死ぬ、とは断言出来ない。
そしてその究極の呪いが必要な状況など起きてはならないし、成就すれば術者が消えたまま一方的に呪われ続ける存在が出来る。
「呪うことは素晴らしいけれど、極めたくはないわね」
ただ高めあい呪いあうだけだ。

 

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FE覚醒ヘンリー×サーリャです。
「サーリャが実家に結婚の報告の手紙を出す」だけ決めてあとは勢いで書きました。
元々理屈屋なので理論的に呪いを実践するサーリャの家は凄く書きやすかったです。
そして究極の呪いの成就の結果はご存知の通りです。
書きながらアレ?と思ってしまいました。無意識です。
勢いしかないのに凄くそれらしくなってしまったのでヘンサーは尊い。

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