クラン・ドゥイユ~夏の2人~

青空に水色の髪が跳ねる。
ケントルム家の所有するプライベートビーチで2人は夏の海を楽しんでいた。
お互いの心身に魅力を感じ既にそういう関係もある。そして父親からの多少の反発はあるが2人の付き合いは公認だ。

「DFCスーツは水着みたいだけど、私の水着はこんな悪趣味じゃないわ」
契機は季節とその浜辺があること。
何よりアクアのその一言に応じ、ヒューゴが思わず見てみたいと言ったことだ。

ヒューゴも外見は常人と変わらないため、彼には少し高いと思えたが洒落た柄の海パンを買いこの日に挑んだ。
彼女が言うようにツェントル・プロジェクトに強制された黒が密着し余計な所しか露出していないDFCスーツと違い、アクア自身が選んだ水着は軽やかで海に合う。
一見水着には見えない。上と下の2枚で出来ており、ビキニでもない。
胸を抱え込み薄い布が肌を守る上は、谷間とおおまかなボディラインのみで彼女の魅力を表現する。
スカートに隠れて一般的なビキニがあり、全ての布は海水に耐えられるものだ。


――逆に刺激が強い。

どう見ても夏服だ。白にところどころ檸檬や柑橘の爽やかな彩りがある。
ヒューゴは泳ぎは得意だが、今の身体が海水にどこまで耐えられるかというテストはここでやることではない。
そのためビーチボールや波の落とし物の貝、何より久しぶりの海と浜辺を満喫するアクアを楽しんでいる。
ただその視線はどうしてもその肉体に向かう。
胸が大きいのは今更ではあるが、確かにDFCスーツとは違う。具体的に言えば谷間しか出ていない。
日差しが強いと上着を羽織りパラソルの下に避難するアクアは腰とヘソは無防備だ。
何よりもこれが水着だという事実が衝撃的だ。
少なくともヒューゴは女性がこの服で街を歩いていてもそうだと気付かない。
だがその衝動を今ぶつけるのも違うと感じ、ただ用意されたパッションフルーツのジュースを飲んだ。

「ヒューゴ、楽しんでいるかしら」
少し不安げにアクアが尋ねる。
「とても楽しんでいる。だが他では着るなよ」
「ふふ、わかっているわ」
交わした口吻は葡萄の甘さだった。

 

———————————–

 

ヒューアクの同士様より『檸檬』『視線』『跳ねる』の指定を戴いて書いた水着話です。
節操がないため好きなカプは色々ありますが、交際は健全でも肉体関係の存在を描くと退廃的になったり、逆に健全すぎる少年と少女であったりと、ヒューアクはかなり希少な存在です。
そして水着話をずっと書きたい!と思っていたし季節も合っていたので喜んで書きました。ありがとうございます!

テキストのコピーはできません。