狂言回しは静かに踊る

「長い、旅だった」
『それ』がこの世界に定着する前に討とうとした。
「無駄だ、クォヴレー・ゴードン。俺がここに現れることも含めて全ては予定調和⋯⋯お前が憎むべきはこの世界そのものの仕組みではないか? 因果律の番人、そして銃神⋯⋯」
「黙れ!」
多くの者は何が起きているのか理解出来なかった。ただ、その声は知っていた。
「⋯⋯クォヴレー、ひとつ聞きたい」
彼と同じ声を、していたから。
「俺が例の力を使ったなら、状況は変えられるか?」
「やめろ、ギリアム・イェーガー⋯⋯⋯⋯変わるが、悪化する。何が起きるかは俺にはわからないが、それだけは確実だ」
次元を越えて今現れようとする、転移を伴う爆撃を仕掛ける敵機はそのものは該当データがないが類似するものはある。
たとえば転移時の次元震・ESウェーブの固有波形――識別・シャドウミラー、即ちシステムXNによる転移反応。
外見は――ロアたちの母艦、化神艦ヴァンドレッド・フェノッサがクロスゲート内部で変容したXN-Lに似ている。
「それこそ終末が訪れる。攻撃を防ぐことは出来るかもしれないが、致命的な因果律の乱れを引き起こす」
「クォヴレー⋯⋯君はやはり若いな。嘘をつくのに向いていない。世界の仕組みはそのようになっていないし、その未来は俺の見る未来とは異なっている。俺ひとりの存在でどうにかなるような世界ではないのだ、ここは」
「待って、ギリアム少佐。私の推測が正しいのならそれも含めて奴の言う予定調和⋯⋯あなたがその力を使ってはならないことくらいは私にもわかる」
ヴィレッタが口を挟んだ。
ギリアムの言葉が止まる――事前に制止する余地はある。まだ。
「あなたにはもっと強い力がある。この世界で戦友と繋いだ絆、その心⋯⋯見せかけの力に惑わされないで⋯⋯!」
「⋯⋯君も理解しているはずだ。俺がその言葉を重視することがわかるのなら、俺は彼らの生きる世界のために何を為すのも躊躇わないことも」
「それでいい。ここに因果は結実する」
鏡合わせの自問自答。相手は仮面を被っているがその向こうの顔はわかってしまう。
「本当に長い旅だった……俺のプロジェクト・エリュシオンはここに始まる。さあ、これに対抗できる力を呼び出すがいい。さもなくば…………」
「黙れ!」
その刃は通らない。次元断層からの一方的な攻撃、しかし揺らいで止まる。
「ゼンガー……邪魔をするな」
「問答無用! 我は悪を断つ剣……貴様が何者であろうと、我が斬艦刀で断つ!」
「お前が、仮に並行世界などから現れたギリアムだとするなら、それは一番知っていよう。暴虐に走るというならばまず我らが許さぬことを」
ランツェ・カノーネ一斉射撃。やはり文字通りの次元の壁を打ち砕くには至らないが、この存在の固着という結果は遠ざける。
「ギリアム、アレを止めるにはどうすればいい」
カイの問いかけに静かに振り絞る。
「……同種の力をぶつけ」
「それ以外だ。次元転移とかいうイカサマは確かに度し難いが、それと同類になるつもりか?」
「奴がどういった性質のものかわからない以上……狙いが俺にそれを行使させることだとしても……」
「少なくとも第一の目的がそれである以上認可できん。お前がそれをするなら奴の前にお前を殴ってでも止める」
押し黙る。それに同調するように攻撃と侵食・出現も抑えられる。
「機を逸したか。ひとつ、助言でもしようかな……この攻撃を確実に止める方法、それはギリアム・イェーガーを殺すこと……俺の名はギリアム。そして……そうだな。敢えてこの名を名乗ろうか。アポロン、またはヘリオスと。その方がわかりやすいだろう?」
次元歪曲反応が消えていく――この場での出現は抑えられた。
しかし彼への揺さぶりとしては有効だ。誰もその手段を検討の余地に入れることすら考えなかったとしても、彼にだけは届いてしまう。
「分岐存在……? それとも……未来から現れた…………」
「ギリアム少佐、耳を傾ける必要はないわ。この世界に現れることが出来る、その可能性があるのなら……致命的に、どこかであなたと違う存在となった、その差がある。そうである以上、あなたを殺した所でその現出は止められるものではない」
「それを否定する材料がない」
憎悪を抑えられない声で低く呟いた。
「自分に対してだけは、悪魔の証明を求めるのだな」
論理矛盾をつく少年の反発に、返答はない。
――――いくらでも鋼龍戦隊を攻撃するという決断をする自分の未来の可能性は、思いつくのだ。最初から自分は『裏切者』だったのだから。

 

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スパロボワンライ『自由』なので、不穏オブ不穏な幻覚というか推しは裏切ってほしくないけどそれはそれとして敵ギリアム見てみたいなーな奴を書きたくなりました!
妄想は!自由!
幻覚しかないですが、やっぱRVで戦い抜いてほしいけどどうしようもない時アレ呼ぶ発想はしっかり出る少佐でいてほしい(そして天秤が傾くと破滅系な……)という本当に500%の幻覚!
一応書いた人の中では「OG世界のイデエンド系BADED時空で生存&過去は変えられないけれども近似した並行世界の仲間だけでも助ける系に傾いた少佐」のが自称アポロンさんの正体です。

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