一発ネタをやらないと出られない部屋

――――――別名、終了メッセージ時空。

「またここに来てしまったか」
毒づかずにはいられない。人には向き不向きがあり、彼、ギリアム・イェーガーは個性豊かな面子に囲まれて騒ぐのは好きだが、自身は面白味のない人間であると定義している。
ノルマとして1つやることが決まっているものがあるが、ネタ切れもネタ切れだ。
「こういう時は……そうだな。第3次スーパーロボット大戦αもヨロシク!」
「いつからそこにいたんだ、クォヴレー」
「予知出来なかったか?」
少年の軽い嘲笑は露骨に『彼の真似』という悪ふざけをしている。
「というのはさておき、俺が来たのはお前とほぼ同じタイミングだ。どうやら俺たちで何かやれということらしい」
「そういうことなら共闘するが、持ちネタが多い奴がただでさえネタ切れの俺の数少ないネタを持っていくな。俺は毎回この部屋を出るのに苦労しているんだ」
「持ちネタを新人に振るのが芸人魂でないのか?」
「そもそも、俺たちは芸人じゃない」
――ツッコミがいない。ついでに言えばボケとしてもパワー不足だ。これまでの周囲の環境はその点においても恵まれていたので、適度に拾っていれば良かったのだがこの部屋にソロで放り込まれると辛いものがある。熱いクロスオーバーなどというものはこの部屋、この時空においては無意味極まりない。隠し条件くらいは開示出来るかもしれないが、彼がその掛け合いの相手だと隠されているものが『これはまずかったかな?』というものである可能性が非常に高い。

と、内心で真剣にぼやいてしまうあたりが、彼がツッコミ役として力量不足な理由であり、どちらかと言えばツッコミ待ちの天然な部分である。

「そもそも今までで『ヒーロー作戦もヨロシク』を2回やっている時点でネタ切れが酷いのに、何故俺がここに喚ばれるのか」
「それは喚ぶ声があるからに他ならないだろうが、OG本編だけで言えばヒーロー戦記より多いのか」
だから俺が呼ばれたのだな、とクォヴレーは理解する。1人でボケ倒すのもなかなか気が遠くなるものだ。
「ではそうだな……スクランブルコマンダー2ndもヨロシク!」
「……やはり俺が出ていない、というのはこの際置いておこう。一応お約束として『スーパーロボット大戦』ではない必要がある」
「そういうものなのか?」
「そもそもプレイヤーは『スーパーロボット大戦』をやっているから俺たちの物語を知っていて、OGならではの展開が見たいという前提があるはずだ」
「確かに俺も別の可能性を……彼らとまた会いたいのもあってこの世界を探していた」
目を細め、だからこそこの部屋から脱出せねば、と向き直る。
彼らはその辺りのモチベーションはある。
そして適切な返しをすることも出来る。天然の部分もあるが、冗談は好きな部類に入る。
ただし、肝心となるネタ振りをする相手がいない。
「……俺はこういうのは苦手なんだ。クォヴレー、何かやれ」
「無茶を言ってくれる。先輩風を吹かせてのハラスメントはよくない。お前の方が他の人間がどうやって来たかを見てきたはずだ」
「うますぎWaveネタを何Takeもやるブリットの無茶は真似できない」
「それは、確かに」
「ついでに言えば普段と違うことをやったとして、キョウスケほどのギャップは狙えない」
流石に極端な例だろう、とは思うが試行錯誤のあとが垣間見えた。
「……そもそも本当にこの空間は『一発ネタをやらないと出られない』のか?」
「俺が『コール・ゲシュペンスト!』の類をやらなかったと思うか?」
「やれば恐らく一発ネタとして判定されて脱出が可能であったはずだろうとは思う」
「却下された。『本編でやりたいから』が差し戻し理由だ」
「理不尽極まりないな」
会議は踊れど進まず。
ゲシュペンストが却下であれば『もう片方』の履行は当然却下され、機体なしに能力は行使出来ない。
クォヴレーの方もベルグバウやディス・アストラナガンがなければ。
「…………脱出用の因子が足りない」
「ノーカウント、却下を食らったようだ」
「失笑を買うのもこの手のものの狙いのひとつでないのか」
「差し戻し理由『真剣に言いすぎている』」
「何だこの理不尽な空間は」

ここはスパロボ世界であれば、ほぼ無条件で繋がる、無限の可能性があり、いくらでも無茶を突きつけて気分で却下する謎の空間。

「……ああ、ようやくカンペが来た。お題・スパロボ30について一言……『ホールドアップ、ブレイブポリスだ! ジェイデッカーもヨロシク!』」
「それはお前が言うとまずいのではないかな……『魔法騎士レイアースもヨロシク! って、前回は掛け合いがなかったな?』」
「『ちなみに俺はかなり周回するぞ』……これでどうだ!」
ハズレ、の紙がはらりと2人の間に落ちて脱出は許可されない。
「…………毎回、毎回こうだ! 俺がそういった面白みのある人間に見えるか!? こういうのは得意じゃないというのに、何度も……!」
「酷い逆ギレだな。何が起きたんだこの部屋で……」

――――――この世界もやはり実験室のフラスコであり、セーブと中断の度に何かが起きているのだ。

 

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スパロボ30記念ワンライお題『OG(オリジナル)』ということで、何かお祭りっぽいものをやろうとしたらひどい(一切の褒め言葉なし)ものが出来ました。
普通に書こうとしたら明らかに1時間で書けないネタばっかりだったんだよう。
オチはないです。タイトルと序文やりたかっただけ、この組み合わせやりたかっただけだよ私!

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