亡霊:復讐鬼

ホープ事件でレイラとアンナを失い、俺は止まったままだった。
何も考えず将校として振る舞い続けた。
その命令もどうでも良かった。
ただ、少しだけ嬉しかった。
そこは目的のためだけにある6人だけの特殊部隊だった。

特殊戦技教導隊。
人型機動兵器の実用化などという絵空事のためのパイロット集団。
試作機の一号機の名はゲシュペンスト。
亡霊。
戦場に存在するが目に見えぬ者。
そして戦争が終われば消える者。
皮肉でしかなかったがそのとおりだ。

隊長のもとに集まった俺たちは変わり者ばかりだった。
上層部の都合に振り回される必要もなく、むしろ俺たちが振り回す側だった。
変わり者揃いだが優秀な俺たちは次々に結果を出し、次の要求にそれ以上の結果を出した。

そんな日常は試作機のテスト中の爆発で隊長と試作機を失うという形で終焉を迎えた。

将校として上層部に振り回され続ける。
地球とコロニーの確執はまたテロによる悲劇を生んだ。
エルザムはコロニー住人を救うために愛する妻を自ら撃った。

どちらがいいのだろうな。
何も出来ず爆発を見るしかなかった俺と、仕方がなかったとはいえ妻を撃ったエルザム。

戦争が始まった。
大義名分は関係なく、連邦軍に復讐した。
下劣な奴らしかいなかった。

ジガンスクードが敵にいた。
原型を留めていなかったがのこのこと『地球圏の盾』を名乗った。
ヒリュウを守れなかった。
レイラとアンナを殺した。
その意味も知らぬ英雄気取りの少年が立ち塞がった。

少女が連邦軍にいた。
アンナが生きていればこれくらいか、というくらいの少女だ。
無理矢理戦わされているはずの少女は俺を哀れんだ。

復讐。
何をすれば救われるのだ。
地球人は死ね。
ジガンスクードは赤。
血の赤。
血塗られた世界。
消えてしまえ、こんな世界ーーーー

 

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教導隊小説、テンペスト編。
元教導隊設定があまり活かされずジガンスクードと復讐に拘った彼ですが、その設定を作る意味があったのだと思います。
ゼンガーとエルザムはこうなる可能性がありました。
ギリアムは絶対どこかでやっています。
運命の悪戯でこうなっただけで、彼らに並ぶかなりの強キャラだったと思います。
ジガンスクードいいですよね。

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