家族の形

事後処理で鉄也を始めとする統合軍は新光子力研究所に詰めている。
所長のさやかの会見は波紋を呼んだが、混乱を抑えたのもまたマジンガーであるという事実が風当たりを弱くしていた。
一段落ついて甲児が鉄也を喫煙所に誘ったがかぶりを振って鉄也は笑う。
「人が来ないのはいいが俺は煙草をやめたんでな。ここでニコチンの臭いを嗅いだら吸いたくなるかもしれん」
「マジかよ。あんだけ吸ってたのにか」
「家庭を持つというのはそういうことだ」
端末を操作して何かのアーカイブを見ている。
「これ料理番組の……え? 鉄也が料理?」
「退院したとはいえジュンは本調子じゃない。夕メシくらい俺が作ってやらなきゃだろ」
溜め息をつく。
「家庭を持つってすげーな……」
「他人事のように言ってるがお前も事態が収束し次第婚約を発表するんだろ」
「……俺も鉄也みたいに変わるのかなぁ」
「それはお前次第だ」

業務を終え帰路につき、昼間調べたレシピを復習しつつ顔馴染みになった商店を回る。
扉を開くと子の泣き声が迎える。
「ただいま」
この家に住むようになってだいぶ経つが、この言葉には未だに慣れない。
煙草をやめたのも今日初めて料理に挑戦するのも結局はそれに慣れるための儀式なのだろうと独り思う。
「おかえり、鉄也。ほら、お父さんよ」
買い物袋を置いて顔を作ると子の泣き方は余計酷くなった。
あやし方のテキストも見ておこうかと決意する。
「あら、買い物してきてくれたのね。お腹空いてるでしょ? すぐに……」
「いや、今日は俺が作る。お前は見てやってくれ。これ以上泣かれたら近所迷惑だ」
「鉄也……」
ジュンは戸惑うがすぐにくすりと笑う。
「ありがとうね、鉄也」
ジュンのエプロンを借り台所に立つ。
レシピ通りに作るだけだ、と甘く見ていたがそうそう上手くいかない。
改めてジュンは凄いな、とそう思考した。
「出来たぞ……すまん、少し失敗した」
「あら、野菜が多くて健康に良さそうじゃない。ありがたく、いただきます」
子はいつの間にか安らかな寝息を立てていた。
「ありがとう、鉄也」
「礼を言われるほどのものじゃない。見ろ、ここが少し焦げてる」
「いいえ、今日もこうしていてくれることよ」
「……それこそ今更だろう……ありがとう、ジュン」
照れ隠しに料理を口に運ぶ。
店のものとも食堂のものともジュンのものとも違う。
グレートのコックピットばかり動かしていた自分がこういうものも作れるのかと、少しだけ不思議な気分だった。

 


本編も前日談のインターバルピースも凄く鉄ジュンだったINFINITY!
中の人に鉄ジュン好きな人がいるんだろうなと凄くありがたいですサンキュー公式!
インターバルピースで鉄也さんの喫煙が強調されてたので敢えてそれを辞めさせてついでに所帯じみさせてみたという。

 

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