■大好きの気持ちを

プレゼントの箱を弄び、横からも裏からも眺めている。
「可愛い女の子からプレゼント貰ったからって挙動不審よ、ヘクトル」
「だってリリーナは未来から来た俺の娘だぞ!? 感慨深くもなるだろ」
「ふふ、お父様がそんなに喜んでくれて嬉しい……初めて召喚された時、若い頃のお父様だって気付いて私泣いちゃって……」
「いきなり召喚されたかと思えば名乗った瞬間泣かれたもんな。大丈夫だ、死んじまった俺の分までお前の傍にいてやるよ」
リリーナの瞳から涙が溢れる。
その頭を武骨な手で撫で、ヘクトルは笑う。
「ところでエリウッドおじ様、ロイを見なかった? 一緒に来たのにいつの間にかいなくなっちゃって。もう、せっかく愛のお祭りなのに」
「え、えーと、それは……」
明らかに狼狽する。
その様子を見て何か知っているのだと涙が残ったままの瞳で見つめる。
「いや、そんなジットリ見ないでくれるかな……ロイなら救護が運んで行ったよ……ヘクトルがアルマーズで……」
「おい! 俺はちゃんと峰打ちにしたぞ!」
「十分凶器よ! 立派な鈍器じゃない! しかもあなたの馬鹿力で!」
「お父様?」
ヘクトルに渡したのとは別のプレゼント箱に魔力が込められて行くのを感じる。
それを渡す相手が誰だったのかは自ずと知れる所だろう。
「い、いや、あれはぶっ飛ばしていい場面だろ! リリーナがいるくせにあのガキ、リンにプレゼント渡してたんだぞ!」
「いえ、そういう感情じゃなさそうだったわよ。父がいつもお世話になってますって……流石エリウッドの息子だけあって礼儀正しいわね」
「いーや、エリウッドの息子だけあって人たらしだ! あの調子で無自覚に何人口説くかわかったもんじゃねぇ!」
「僕にまで風評被害が!?」
プレゼント箱に込められた魔力が霧散していく。
それを眺めながらリリーナは逡巡していた。
「そう、そうよね……ロイは誰にでも優しくて……それで凄くカッコいいから色々な女の人に想いを向けられて……幼馴染ってだけじゃ……ううん、幼馴染だからこそお友達にしか見えなくて……」
また涙が溢れてくる。
「リリーナ!」
ヘクトルがリリーナの肩に手を置く。
「ったく、俺の娘のくせに泣き虫なんだな、お前は……大丈夫だ、ロイはお前を選ぶ。だってこんな可愛くて強くてロイのことを想ってる娘、お前の他にいるものかよ。ただフェレの血筋は人たらしなくせに鈍感でな。ちゃんと言わないと伝わらないんだ。今日は愛の祭りだろう? バーンとぶつかってこい!」
「お父様……はい、私頑張ります! 見ていて下さいねお父様!」
そのまま駆け出していく。

「……で? 僕とお前の仲でも娘は嫁にやらないとか言っていたような?」
「そもそもロイを『このクソガキ!』ってアルマーズで殴った時点で破綻してるわよねそれ」
「うるせえ! 確かに色々複雑だが娘の恋を応援しなくちゃ父親失格だろ!」
2人につつかれヘクトルは慌てる。
リンがプレゼント箱を隠し持っているのには気付かない。
――闘技とこの騒ぎで渡す余裕ないな――

「ロイ! お父様がごめんなさい!」
「はは……夢の中で母上が呼んでいた気がしたよ。でももう大丈夫だ、心配かけちゃってごめんね」
ベッドに横たわったロイにすがりつく。
「ねえ、ロイ、プレゼント迷ったけど……頑張って選んだの。あなたのために。大好きよ、ロイ」
「ああ。僕もリリーナのために花束を用意したんだ。大好きだよ、リリーナ」
枕元から花束を取り笑顔でリリーナのプレゼントと交換する。
「そ、それって……あら? でも花束いっぱいあるわね」
「うん。これは召喚師さんに、これはいつも出撃の時お世話になっている……」
「やっぱりわかってない!!」
乙女心は、前途多難。

 

FEH、バレンタインイベントの話。ラストマップにロイがいなかったのは多分こういうことなんだと思いますw
初の覚醒if以外の超英雄! しかも皆絵柄↑だ!
色々と戦争になりそうな組み合わせではありますが私はロイリリでヘクリンなので大狂喜です。
お祭りゲーらしく「リリーナの元いた世界ではヘクトルは死んでる」ということにも触れられてましたねー。
どうした公式。シスコン天元突破別人のエフラムと同じ公式とは思えんぞ。
という訳で書けば出る教です。皆欲しい!

 

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