大切な日に変わっていく

「ヒューゴの誕生日?」
フォリアに問い返す。一週間後がヒューゴの誕生日だと教えてもらったのだ。
「何で教えてくれなかったのかしら……パートナーなのに」
「姐さんは悪くないです! 戸籍だけの奴だからって無頓着だし、祝われても微妙な反応だしで。でも姐さんから祝われたなら別だと思うんですよね」
ニシシ、と歯を見せて笑う。親友の反応が楽しみだという好奇心と、彼らへの好意が7対3ほどの割合で溢れている。
「フォリア、ありがたいのだけどひとつ忠告しておくわ」
「何でしょう姐さん!?」
クライ・ウルブズの末席として舎弟精神が染み付いているフォリアはアクアの静かな叱責にビシリと敬礼をして袖を正す。
「お店の予約とかプレゼントの用意、一週間前じゃ間に合わないのよ。あなたに大切な人が出来た時のために覚えておいて……ふふっ、でも一週間もあれば出来ることもとても多いわ。ありがとうね」
柔らかな微笑と共に手を振って早速準備に向かうアクアを、敬礼したままのフォリアが微かに赤面して見送った。
「……いい嫁さんを捕まえたなー、羨ましいなー、畜生ここまでお膳立てしてやったんだから惚気のひとつやふたつ聞かせろよ!」

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まず当日のディナーを組み立てる。
フォリアに言ったように一週間前からでは店の予約は間に合わないし、ヒューゴが喜ぶのは手作りの方だろう。
旬の食材、これまで見てきた中での好き嫌い、組み合わせ。
「自然と出来上がるものね。お母様に感謝しないと」
ひとり呟き試作に挑戦する――量も考えなければ。ヒューゴは薬の影響が強い時でなければかなり食べる方だ。
「薬……うん、大丈夫よね。あの様子ならフォリアがついていてくれるだろうし」
そんな思考を抱えていると、塩味がこころなしか刺々しく感じた。
プレゼントも考える。ネットで調べた流行、同僚たちへのリサーチ。
「……これで」
端末の注文ボタンを押して一息ついた。

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アルベロから夕飯を奢ると呼び出されると、当然のようにトレーニングがついてきた。
「心を無に……無に……フォリア、お前は随分余裕だな」
「親父の考えなんてお見通しってね」
前は空腹なんて気にならなかっただろう、と心身を引き締めているとアクアが訪ねてきた。
変わるはずのない連邦軍の制服だが、いつもと雰囲気が少し違う。
「よし、ヒューゴ。今日はここまでで切り上げる。すまんな、飯を奢るのは俺でなくアクアだ」
「……は?」
理解が追い付かない。アクアがアルベロとフォリアに礼をしていることから、何か仕組まれていたのは感じるが。
「姐さんとしっぽりな。ハッピーバースデイ!」
どうやら黒幕はこちらだったことを感じ取り、後で一発殴ればいいと思い直した。
「誕生日おめでとう、ヒューゴ」
このために借りたらしい厨房に近い会議室に招かれ、ラッピングのかかった箱を渡される。
出てきたものはウォーターボトルだった。携帯性と保温、あとはキーホルダー状のピルケースをさり気なく付けられることが決め手だとアクアは語った。それにフォーマルなハンカチが数枚。
「軍でも持っておいて損はないわよ」
「……今日は妙にお喋り、というより早口だな」
会議室に並んだ料理の豪勢さといい、明らかに気合が空回りしている。
「戸籍上の数字でも、大事な日よ」
「確かにな。嬉しいんだが、どう反応したものか……」
言葉に詰まる。少し意地を張る所があるパートナー。噛み合わない時の空気をお互いに感じ合っていた。
「……ありがとう、アクア。誕生日っていうのは相変わらずピンと来ないが、これから毎年お前にこうやって祝ってもらえる日だと思うと、とても嬉しい」
だから今回折れるのは、祝われた方。
「それにお前の誕生日まで少しだけ年の差が縮まるってことだしな」
重くなった雰囲気を笑って吹き飛ばす。
「意外。気にしてたんだ」
「結構な。さて、食べるぞ。折角作ってくれた料理が冷えちまう」
箸を取り、手を合わせて。
「いただきます」

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「飯テロ画像は流石に来ないか。2人とも真面目だから食事中にカメラ出す訳がないよなー」
フォリアは端末と睨み合っている。
「放っておけ。それより俺たちも飯に行くぞ」
「え、マジで!? たまには親子水入らず的な!?」
「ああ。そして祝おうじゃないか。ヒューゴの誕生日を」

 

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ヒューアク好きの某フォロワーさんのお誕生日ということでヒューゴ君の誕生日ネタです。
誕生日だから(?)エスト父子生存時空です。書きなれてないせいかフォリア君が妙にチャラいな!?
誕生日が戸籍上だけ、のキャラオリジナルだと多いですよね。だからこそ寺田誕生日が増殖するのかもですが
アクアちゃんからのプレゼント、どうするか迷ったのですが実用性重視です。お水いっぱい持っておこうぜ!

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