亡霊の復活祭

ギリアムがおかしい。
何故かR-GUNパワードをじっと見ている。
「どうしたの、ギリアム少佐」
「いや、ハロウィンプランの参考にしようと思ってな。RVは俺用にチューンしすぎたから様々な機体の良さを学んでいるところだ」
自覚はあったのね。OSもモーションも複雑すぎて使いこなせる気がしないわ。
「ではあなたの考えるR-GUNの良さは?」
「SRXチームの指揮官機らしい特性だ。SRXは普段はPT3機で運用し敵部隊を殲滅、大型の敵を相手に合体する。そしてR-GUNはPTだがSRXの武器になる。イングラムの計算がよくわかる」
「流石ね」
心から笑った。
よくわかっているじゃない、イングラムのこと。あと、私のことも。
「ただSRXチームに特化しすぎて参考にはならないか」
「単純にPTとしての使い勝手を見てみたら? シミュレーターを用意するわ」
R-GUNの強さ、見せてあげる。

自律機動のゲシュテルベン3機を小隊員として用意、指揮官機から命令が可能。
ランダムで特性を選出――近接戦闘、遠距離砲撃、支援。
そしてR-GUNとR-GUN。
勝利条件は敵小隊の全滅。

そして読み通りになった。
パイロットとしてはなかなか難しいけれど、指揮官としては比べるまでもない。
そして私は指揮官だからパイロットを把握している。
ギリアムは集団の中では味方の攻撃に追撃し、味方に迫る敵を攻撃する。
非常に優秀だけれど、R-GUNでは彼の特性は活かせない。
敵小隊を分散させ各個撃破させるよう指示を出す。
そして私がR-GUNで彼と戦えば、私の小隊は敵小隊を殲滅出来て集中攻撃が出来る。
当然彼はそれを理解しているが、小隊員の撃破を優先するか、指揮官を潰せばいいと考えるかといえば――

ツイン・マグナ・ライフルがかすった。

ありがとう、読みどおりになってくれて。
R-GUNの武器ではゲシュテルベンを落とすのに手数がいるものね。

個人戦闘の特性が同じで手の内を知り尽くしている私たちは条件が同じなら――少し悔しいけれど彼が勝つことの方が多い。
ただ私はR-GUNを知り尽くしている。
OSとモーションの癖、なかなかでしょう?
慣れる前にどうにかしないと。
「ハイ・ツイン・ランチャー……」
彼が狙うのは一機に集中している小隊。
隙だらけよ。

「虚無に消えろ! デッド・エンド・シュートッッッ!!」

え。
ギリアム?
撃墜しちゃったし、損壊は2機撃墜程度で――集中していたとはいえ別行動で、そもそも狙撃武器なのに2機撃墜出来るあたりパイロットとしての腕前どうこうの問題ではない気がするのだけど、それ以前に。

ギリアムがおかしい。

「ギリアム少佐……熱でもあるの?」
シミュレーションを終えて駆け寄る。
「見てのとおりの健康体だが。指揮官としてもパイロットとしても君の方が優秀だっただけだ。悔しいが見事なものだ」
そうじゃなくて。
「……狙撃で2機撃墜出来る腕前は私にはないわ。危ない所だった」
ツッコミ損ねた。

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ギリアムがおかしい。
「拳一つを甘く見るな!!」と叫んでカイ少佐と笑いあっていた。
ツッコミが入らない。

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ギリアムがおかしい。
「五! 黄! 殺! 斬!!」とか叫ぶのはL5戦役の時のグルンガストからで。
「大凶方の彼方へ去れ!!」というのも元からでとても楽しそうだけど。
「連なる凶星……吉神を破り、土に帰す……」とは。
言っていたかもしれない。
ツッコめない。

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ギリアムがおかしい。
「ジガンテ……ウンギアアァァァッッ!!」
「流石少佐! ノリノリですね!」
タスクは一応ツッコんでるがタスクでは駄目だ。

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ギリアムがおかしい。
「頼んだぞ、レオニシス・ヴァーガ……!」
おかしい。
「砲火集中……追撃! 光の雨で消えろ! バスター・モード……貫く!!」
おかしくないかもしれない。
ツッコめない。

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ギリアムがおかしい。
「ジョーカー……切らせてもらった!!」
「見事な切り札だ。流石です、少佐」
貴重なツッコミ役が根本的に似た者同士だった!!

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「ギリアム少佐、楽しそうですね」
ジョッシュが笑っている。
常識と良識のあるジョッシュから目上にツッコミを入れるという発想が出るはずもなかった。

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「もうひとりのミスター・ゴースト、なかなかファントムにチャームだな?」
「見事な迷惑暴走味方ぶりだ」
いた。ツッコミ所しか存在しないダブルツッコミキャラが。
「……止めてくれないかしら」
「や~だよん♪」
都合の良さすぎるコードDTD。
「まあ真面目にやると、タイプ・ハーケンの魅力に取り憑かれちまったみたいでな。全く、罪なゴーストちゃんだぜ」
彼らが語るところによると、異界のゲシュペンストのデータから得たマリオン博士の発想はギリアムにとって新鮮だった。
だから感化されてアイデアを求め、ああなったのだと。
「完全に『している』な」
意味はわからないが非常に強い毒が含まれているのを感じる。
「でもでも~? 太陽はこの世界の全てを照らしちゃってるんだよね~。今更すぎるよね~」
「そのとおりよ。真似事しか出来ないわ。彼には彼の良さがある」
「言ってやれ、クール気取りツンデレ」
色々納得いかない気もするが。
「言わんのなら私が語彙の全てを尽くして刺すが」
「言うわ」
「これはまずいよねん」

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「虚無に消えろ! デッド・エンド・シュートッッッ!!」

呼び出して音声データを再生すると。
悶絶していた。
正気の時だと効くわよね。
そして聞き慣れるとなかなかいいものなのでこの方向性でもいいかもしれない。
「あなたの終末が見えるわ」
ただ、それは彼らしさの喪失なので。
「私の手で送りこんであげる」
「ヴィレッタ……その、俺は……」
「デッド・エン」
「言うなああぁぁぁぁ!!」
散々いじくりたおし、ギリアムは元に戻った。

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RVにシシオウブレードを装備した。
これがとりあえずの着地点だ。
「格闘戦も大事だからな」
「接近戦、ではなく?」
「意地悪を言ってくれる。銃では対応できないこともある」
「メガ・プラズマカッターは?」
「……威力が大事だ」
そういうことにしておくわ。

 

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色々と残念なギリヴィレです。
2人とも乗り換えが凄く楽しいです。
ヴィレッタさんはやや厨二気味でデッドエンドだし。
ギリアムさんは換装武器含め割と叫ぶ系な上になかなか独自の感性があります。
模擬戦は勿論前振りなのですが、ゲームでは出ないヴィレッタさんの強さを限りなくカッコよく書いたつもりです。
どちらも楽しかったです。

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