猫たちの休日

休日は大事だ。戦士である彼らが守るべき平和、帰るべき日常を味わう日。
ライは色々言って呆れつつもリュウセイの趣味に付き合っており、女3人で街を歩く。
「たいちょ……ヴィレッタ、次はどこへ行く?」
マイにはなかなか難しい。
子供だが軍しか知らない彼女は同年代や肩書きを持たない人間は普通に呼ぶが、目上の人間はそう呼んでしまう。
大人たちはその度に訂正してきた。
「ヴィレッタさん。映画館と美術館、どっちにします?」
アヤはこの極稀な機会を楽しみ笑っている。
「美術館でしょう、アヤ」
ヴィレッタも笑う。いずれこうするのが当たり前になることを願いながら。

動物を題材にした絵を描き続けた、とある水彩画家の絵画を集めた特別展。
マイが瞳をきらめかせ、アヤが苦笑したしなめる。
美術館ではお静かに。
「子犬だ、可愛い。リュウ、こういうの好きかなぁ……」
「この良さがわかるのはライね」
「違いないわね。マイ、動物は可愛いでしょう? リュウセイは格好いいものが好きなのよ」
マイはクイと首を捻る。
「この黒ヒョウはカッコいいと思うんだが。リュウに見せたい」
「リュウにも困ったものね。それで、ヴィレッタさんの愛しい人は?」
急に水を向けられて戸惑うが笑う。
「私もわかるし彼もわかるはず。ただ彼は忙しい人よ。任務の息抜きに別の任務を己に与えているだけ」
「ああ、そういう感じですね。お仕事とヴィレッタさん大好きですよね」
「困った人」
「男の人って勝手ですね」
「本当にそう」
同じ人を思い浮かべただろうことを笑い、美術館を進む。
「あ、これならリュウも喜ぶぞ。リュウそっくりだ」
猟犬だった。
「……どう見えているのかしら。ああ、でも仲間と共に狩りをしているわね。ライはそれっぽいからリュウもこれでいいかも」
2つの苦笑いと朗らかな笑い。
「そうね、リュウセイとライはこの絵ね。それなら私たちも探しあいましょうか」
「絶対に猫だぞ」
「そうね、猫ね」
マイは特殊な力を持つが、普通の少女としての拘りも強い。
「なるほど。アヤが美術館を好きな理由がわかった。絵は楽しい」
「美術館にあるのは絵だけじゃないのよ。でもホッとしたわ」
心の底から安堵する。
リュウセイに感化されすぎて先行きが不安で仕方ないが、ちゃんと女の子なのだ、と。
――そして露骨ではないけど明らかに感化されている男の子のライは、もしかしたら駄目かもしれない。
などという思考をアヤは封じた。
流石に失礼だし誰にも言えない。

美術館を進む。
「あ、これはヴィレッタだ」
「……これが?」
群れを率いる牝のライオンだった。
「綺麗でカッコよくて強いリーダーだ。そうだろう?」
「あら嬉しい。私もマイより先にマイとアヤを探さないとね」
「そうだな。猫だと嬉しい」
「猫よ、きっとね。ライオンも猫だもの」
「そうなのか?」
そう聞くマイが知るはずがない。
この絵に描かれていない雄のライオン。たてがみを持つ百獣の王。
普段は養ってもらってばかりだが、仲間を守るために勇猛に戦う太陽の化身。
――あとで教えてやろう。なかなかエスプリが効いていて彼好みだ。
彼はそうではないが、少しばかり反省してもらう必要がある。
月灯りに遠ぼえする一匹狼の絵を注視して、ヴィレッタは笑う。
「……聞いたら何というでしょうかね」
「素晴らしい褒め言葉よ。直感と共感の力である念動力の強いマイが心から言ったのだから」
ニヤリ、と心から笑う。
「楽しそうですね、ヴィレッタさん」
「楽しいわよ。美術館もいいわね」
「あの人とヴィレッタさんは映画館の方が好きでしょう?」
「どうかしら。ほら、マイに置いていかれるわよ」
「そうだぞ。じっと見るのもいいが次の絵も見たい」
休息は大事だ。心を安らげ、喜べる。

 

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趣味に走りすぎたSRXチームの乙女たちです。
私はアヤがかなり好きな中で新のアヤが一番好きなので、αやOGでも美術館好きの設定を使っています。
マイも好きですがSRXチーム内だとマイをマイらしく書けないのが欠点です。
そして日常ではリュウセイはボロクソ言われます。そこも含めてリュウセイの良さです。
ライやヴィレッタさんや教官も勿論大好きです。
SRXチームという概念は尊いですね!

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