太陽と月

アポロン、ヘリオス、リュケイオス、アギュイエウス。
ギリアムの別の顔、もしくは半身の名前。
全てギリシア神話の太陽神に由来するのだと、あの決戦の後でヴィレッタは教わった。
「あなたには夜の闇を照らす月の方が似合うかもしれないわね」
くすり、と口角を上げる。
何の悪気もなく、ただ彼には闇と静寂が似合うという理由で。
「俺という月を照らしてくれる太陽はもういない……だから俺が太陽になるしかないんだ」
彼も笑っていた。
何もかも諦めて、笑うしかないというように。
彼もまた鎖に縛られているのだろう――イングラムとは違う形で。
ヴィレッタにはそれがわかってしまう。
そしてイングラムと重ねてしまうことを申し訳なく思う。
どこか似ている所があり、共鳴を起こしたこともある。
それでも彼は違う――――ギリアムはもう、ヴィレッタたちを置いて行きはしない。
未来は、変わったのだから。そのはずなのだ。
拭い切れない不安を希望と願望で上塗りして、ヴィレッタは囁く。
「ギリアム少佐、私にコードネームを下さらない?」
情報提供者として協力しているのだから、その時用の名前があってもいいはずだ、と。
「太陽神の名前がいいわね」
ヴィレッタの意図を察し、ギリアムは即座に告げる。
「“アマテラス”はどうだろう? その名を使う場合は俺のコードネームは“ツクヨミ”だ」
言い切った後顔を背ける。
照れているのだろうか。それとも静かに涙を流しているのだろうか。
「って、髪を触るな!」
「岩戸に隠れるのは“ツクヨミ”ではないでしょう?」
「知っていたのか」
「あなたが神話マニアだと聞いてちょっと興味が出てね」
「誰から聞いた?」
「あなたの部下の個性豊かな三人組」
少佐ともなれば部下は沢山いるが、ギリアムにはすぐにその三人の顔が浮かんだ。
「あいつら、上司のプライベートを何だと思っているんだ……しかしいいのか? 君も月が似合う人だが」
「月になりたくなったら太陽に照らして貰うわ」

優しく照らし合う太陽と月。
月灯りの宇宙で出会った2人は、月を見上げ約束を交わした。

 

スパロボワンライ用SS、お題は『月』でした。
まあ私がこのお題見たらギリヴィレ以外ないだろって感じですねw

 

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