4月10日のメランコリー

ミュートシティの街並みはテナントが入れ替わった程度であまり変わらなかった。
変わったのはその治安で、ダークミリオンの壊滅とスペースパイレーツの無力化によって人々はF-ZEROやスマブラに安心して熱狂出来るようになった。
――こんな形で銀河連邦警察の世話になるなんてね。
店頭を覗きながらサムスは自嘲する。
銀河の守護者たる彼女が法の手に守られたこの地でしか心の安寧を謳歌出来ないのは理由がある。
スペースパイレーツの首魁たるリドリーがスマブラ戦士として抜擢されたこと、それにより組織は骨抜きにされたが合宿所であるスマブラ屋敷ではその口が手出し出来ない彼女を全力で煽ってくるのだ。
スルーするにも心の余裕が必要なため、賞金首の討伐やF-ZEROの観戦、そして。
「いらっしゃいませ」
ファルコンハウスのコーヒーで息抜きをしている。

「誕生日おめでとう、バート」
ここに来るまでに予約の受け取りをしたサルビアのブーケとブランド品のハンカチを渡し、サムスは笑う。
「ありがとうございます。でも、少し物足りませんね」
「え……!?」
手首を取りグッと引いて、彼女を胸に抱き留めた。
「気を張りすぎて隙だらけですよ?」
「そ、それは相手があなただから……! それに店でこんなこと……!」
「閑古鳥に感謝ですねぇ。でも今はこれ以上をする気はありませんよ。今は、ね」
ククッと口角を上げて喉を鳴らし、ゆるりと解放した。
「まあ男の欲望を別にすると、あなたの笑顔がぎこちないのが気になりまして。それが一番のプレゼントですし」
「それは……」
「だから、デートに行きませんか? 行き先は……スペースパイレーツ残党殲滅」
「……ふっ、フフッ! そんなデートある? しかもあなたの誕生日なのに!」
破顔するサムスを今度は柔らかく抱きしめた。
「誕生日らしく花火を上げてやろうじゃないか。そしてその後は……」
露出した鎖骨に唇を添え、鋭く笑った。
「最高のプレゼントを戴こう」

 

――――――――――――――――――――――――

 

単体で書くのはもんのすっげー久々なバーサム!
お題『鎖骨にキス』と明日がバートさんの誕生日である4月10日であることの複合から割と即興です。
スマブラが治外法権でも流石に銀河連邦警察のお膝元でリドリー放置する訳がないのでヤツはファルコンハウス出禁です

テキストのコピーはできません。