■正しき地獄の理想郷

酷くいびつな世界だった。
ヴァイス・ブレイブはあらゆる異界に繋がっている。
異界とはifーー可能性だ。
もしも戦乱の中で祭りを楽しむことが出来たら。
もしも敵対した末に死別した友が、生き残ってわかりあえたら。
もしも邪竜が世界の真の幸福のために力を使ったら。
もしも邪竜の器にしかなれなかった人間が倒されることがなかったなら。
ヴァイス・ブレイブの持つ可能性は幸福なものしかなかった。
ありとあらゆる幸福が集ういびつ極まりない世界だった。

アルヴィスは嫌悪する。
死者を弄ぶだけの世界。死者に夢を見せるだけの世界。
ヴァイス・ブレイブに死は存在しない。
永遠に幸福な夢を見せられる。
そんなものは幸福ではないーー地獄だ。

嫌悪したがアルヴィスは肯定した。
ファラの炎は正義の象徴。
悪を灼き尽くす地獄の炎だ。
幸福な地獄もまたファラの正義であり、灼かれ続けるしかないのだと。

ヴァイス・ブレイブに喚ばれた時こう言った。
「聖戦士ファラとマイラの血を引いている」
ロプトではなくマイラだと言ったことはあったが、ロプトに踊らされ続ける傀儡の負け惜しみでしかなかった。
マイラはロプトの力を正しきことに使ったが、所詮その血統はロプトでしかない。
世界を歪め続ける邪悪だ。
ただこの世界ではアルヴィスはファラとロプトの力を正しく使う聖戦士だ。

ユリアが笑っていた。
セリスとユリウスと共に祭りを楽しんでいた。

イシュタルの想いは報われた。
ユリウスと愛しあっていた。

サイアスは親友と共に戦場を操り、時々アルヴィスを楽しそうに見ていた。

シグルドは仲間と子たちに愛されていた。

ディアドラはとても幸せだった。
「アルヴィス様、シグルド様が食事に誘って下さいました」
「良かったな、ディアドラ」
「アルヴィス様もですよ。私は2人の妻ですから3人でいるととても楽しいです。2人の時間もちゃんと取れますし」
「そうだな。私たちの子が幸せに生きている。親としてこれ以上の幸福はない。愛している、ディアドラ」
「愛しています、アルヴィス様」
幸福な愛を告げあう。

こんな可能性が存在するはずもないが確かに存在している。

ヴァイス・ブレイブは地獄だ。
永遠に続く幸福な理想郷。

 

————-

 

FEHのアルヴィスの話。
原作の聖戦の二次創作はしないのにヒーローズでは聖戦ばっか書いてますね!
アルヴィスの召喚台詞すっげー叩かれてたし私も絶対言わないと思うのですが、逆に言わせなければならなかったのだと考えてこんな話になりました。
正しくなれるはずもない正義の人が正しくなるための台詞です。
聖戦に超英雄が来るとしたら多分、というか確実に「愛の祭り」ですしそこと花嫁以外で来たら絶対に叩かれますが私は見てみたいです。
小説でユリア&ユリウス&セリスが楽しんでいる祭りは個人的には「冬祭り」です。
同じ話をシグルド視点で書いたら彼は『天国』だと言うだろうと思います。
しかしヒーローズのアルヴィス原作再現と悪意と皮肉しかないですね! 愛が重い!

テキストのコピーはできません。