昼下がりのワーカホリック

何もない、というのも困ったものだ。
軍人、特に彼――ギリアム・イェーガーにまわる仕事がないというのは平和の証であり、素晴らしいことではある。
部下である光次郎が昼食を要求してくれたのなら、今なら仕方のない奴だと連れて行くのに、粛々と雑務をこなしている。
普段からこの勤勉さを見せてくれればもっとありがたいのに、と手伝う旨を言えばたまには休んでいいですよとあまりありがたくない答えが来る始末で頭を抱えたくもなる。
ワーカーホリックというのはこういうものを言うのだろう。
彼の予知能力はしばらくの平和を告げており、これではシャドウミラーと同じだと己を戒めるも状況が改善されるはずもない。
「ギリアム少佐、ヴィレッタ大尉が訪ねてきましたよ」
「通してくれ」
にわかに湧いた喜びの感情に、掌を返して平和のありがたさを噛み締めたくなる。
予知能力者であっても、長命種であっても、人とはそういうものである。
「どちらかと言うと貴方の部下の方に用事があったのだけどね。頼まれていたデータを渡しに」
――誰だ。壇か。光次郎か。怜次か。
彼らしからぬ嫉妬心を抱えて気のない返事をする。
「それが終われば今日は暇なの。平和っていいわね」
「SRXチームは?」
「リュウセイはライディースが特訓中。アヤとマイは2人で美術館に行ったわ」
「……今の展示は旧西暦のアニメ展だったはずだが?」
「少しでも美術館に興味を持ってもらえればと苦渋の決断よ」
軽く笑い声を漏らして嬉しそうにする。
しかし彼にもわかった。彼女が嬉しそうにする理由はこれだけではない。
「ならば昼食でも奢ろうか。部下が世話になった礼にな」
「情報部はお店の情報も詳しいのかしら?」
「望みに叶うよう善処しよう」
今度こそ、彼は心から喜び、笑顔を浮かべた。

「おっしゃ、作戦成功!」
「僕たちが休むよう言った所で少佐は聞きませんしね。流石壇さんです」
「いや、君たちが少佐の機敏を見抜いてくれたおかげだ。何よりヴィレッタ大尉に感謝だな」
「ああいう人のハニトラなら引っかかってみたいなぁ。あ、いや、大尉は素晴らしい人っすけど」
そして彼らにも一時の娯楽を与えていたようだった。

 

スパロボワンライ用SS。
お題は「特になし」(フリー)ということで、特に何もない時のギリヴィレ。
こういうネタ出ししたがるのは物書きのサガですかね……w他のネタ候補は「あるのにナシとは何だ」と聞くラキとジョッシュでした。
私のカプ嗜好は2人だけの世界よりからかったり賑やかしたりな他キャラがいる方が好きってものなんですが、情報部が最近そのせいで暴走しています。
元々八房てんてーの暴走で生まれたようなキャラだけどね!

 

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