女の世界

――たまに出撃のない時くらい、ルーを労ってやろう。
前の戦時中はプルとプルツーに時間を割かれ、ルーと心を通わす暇もなかった。
ルーがいつもいる談話室に行こうとすると、號に阻まれた。
「何だよ、號」
「俺は渓を守る」
「あんなおっかねぇ女を守ろうとしてるのはお前と剴くらいだよ!」
ルーも大概だけどな、と小声で付け加えつつも號を睨みつける。
「渓はいま『ぢょしかい』とやらをやっているらしい。男が近づいたら片っ端から追い返せとのことだ」
「な、何!? 女子会だと!?」
ジュドーよりも傍にいた他のメンバーの方が浮き足立っている。
女子会。男子禁制の秘密の花園。
コイバナ、スイーツ、男の格付け、“どうやったらそんなに痩せられるの!?”などなど。
「よって、近付く男はゲッター線にかけて排除せねばならん!」
「やめろ、お前は本気で生身でゲッタービーム放ちそうだから!」
「あ、あのさぁ、號」
チームメンバーである剴が柔らかく話しかけると、號も少し警戒心を解く。
「お前にそうやって警備させといて、渓はお前のことなんか気にしちゃいないかもしれないぜ?」
號の目が光り、すわゲッタービームかと思われたが、強く睨みつけるだけで終わった。
「そう、女子会の中でお前以外との相手とのコイバナで盛り上がっている可能性がある!」
「俺は渓を守る」
多少の迷いは生じたが、號の眼光は変わらず鋭い。
「だいたいコイバナとは何だ」
脇をくぐり抜けようとしたウッソを投げ飛ばし、息も切らさず疑問をぶつける。
「恋愛の話……號さんだって渓さんを好きだから守るんでしょう!?」
「好き? 恋? 俺にはわからん。渓を守るのは……渓が渓で、俺が俺だからだ」
戸惑いなく言われて、剴は複雑ではあった。
渓に恋をしている彼。
だが渓が恋をしたのは、號に対してだった。
しかし號が渓に抱く感情は恋愛感情ではない。
使命感だとか、存在意義だとか、男女間によくある感情では推し量れないモノが、彼の動機。
無論、その強さを剴は知っている。
知っているから、剴は身を引いた。
「だから、渓がお前たちから『ぢょしかい』を守って欲しいのなら、俺はそうするまでだ。俺は、渓を、守…………」
「うるさああああああああい!!!!!」
突如談話室の扉が開き、顔を真赤にした渓が號の頬に拳を突き当てる。
「な、渓!? 『ぢょしかい』はどうした!?」
「アンタが外で守る守るってうるさいからそっちの話題ばっかになって恥ずかしくていられないよ!」
「あたしたちにとっては想定通りだけどね」
「號の叫び声を肴に渓をからかう……本当に楽しいわ」
ルーとジュンが頷き合い、目を三角にした渓が彼女たちを睨みつける――流石に彼女たちを殴るわけにはいかない。
「もう女子会って言われても出ないからね! 行くよ、號、剴!」
チームメンバーを連れて去っていく。
ジュドーも何をしたかったのか忘れてそれを眺めるしかなかった。
「あーあ、次誰を話題にしようかなー」
「ミレーヌあたり良くない?」
「バサラが興味なさそうだからねぇ。三角関係と呼ぶには甘くない?」
「ふふっ、だからこそ話が盛り上がるんじゃない」
女子会メンバーの余裕の表情に、押しかけた男性陣は呆然とし、こう心に刻んだ。

――――男子禁制は、侵すべきものではない聖域である。

 

スパロボワンライ用SS、お題は「男子禁制!」でした。
という訳で女子会話、周囲女子からからかわれるなら號渓だろう、と!
號渓はDで初めて知りましたが正直本編よりDの描写のが萌えますw

 

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