あどけない寝顔

ヴィレッタが熱にうなされているという連絡がアヤから入った。
「隊長不在のSRXチームによる投票で賛成2票浮動票2票でギリアム少佐に看病していただく方がいいという決議になりました」
何故俺なのかという疑問を挟めば、病気ではないとの診断のため心労か『地球の技術ではわからない』のどちらかだ、と。
票数で言えば俺とヴィレッタが反対した所で浮動票ーーリュウセイとマイは賛成に移る。
俺には拒否権があるが行使するつもりもなく、単独任務だと告げてRVで向かった。
目的は違えど常日頃から行ってきたことだ――いや、何故これが日常になっている。
どう考えても上司が悪い。今日も例の仕事着を着ている。
そもそもこれをこなせる人材は他にヴィレッタしか--やめよう、不毛だ。
「……ギリアム少佐?」
「ああ、そうだ。安心してくれ、幻じゃない」
あまり血の通っているとは言い難い手はこの時ありがたく、熱に添えて声をかける。
SRXチームには言えようはずもないーー医療に関しては地球の技術しか知らない、などと。
自分の身体のこともあの装置をどう復元するかの材料でしかなく、今まで検査で異常が見つかったことはない。
「ひとまず果物だ。いいものを選んできた」
友に恵まれるということは大事だーー例の上司の存在もだいたいにおいては恵まれている。
「どうした、ヴィレッタ」
「………………」
「……ヴィレッタ?」
俺の声に答えないので驚いたが、寝息を立てていた。
健やかであどけない、今まで熱を帯びて涙を浮かべていたとは思えない寝顔だった。
その時Dコンに通信が入った。
「凄いですね、少佐!」
「……何がだ」
「少佐を狙ったテロリストが侵入していたんですよ! 急な出撃で予定が狂って露見したんです! 中将も命令は出してないって話ですし……」
「任務中だ。話は後でな」
その違和感に答えを導く必要はない。
重要なのは公的な任務の選別と、何よりこの安息を守ることだ。
「心配いらない。彼も必ず帰ってくる」
まだ見えない未来を言えば、その通りになる。

 

――――――――――――――――――――――――

診断メーカー「あどけない顔ですやすやと眠る君の寝顔を、ひとりじめしているのがたまらなく嬉しい。触れたいけど起こしたら悪いからこらえて、そっと寄り添うギリヴィレ」
この2人はあどけない顔を導く前提がなかなか厳しく、今までの話からむしろヴィレッタさんの前提を長くするべきではと思いこの話です。
OG1EDの「私の知識が必要になったらいつでも呼んで」が「何があってもあなたを助ける」に見えるのです。

テキストのコピーはできません。