■ひとつの余暇の過ごし方

「貸してもいいけど、姐さんには合わないと思うよ? 姐さんは待つタイプじゃなくて追い詰めるタイプだろ」
そう言うリンクは袋を魚でいっぱいにしながら、なお大漁が続いていた。

――――その状況を見て難しいと思えという方が無理というものだ。
かといって油断したつもりもなければ手を抜いたつもりもない。
しかし一時間半が経過して未だ釣果はゼロで、そろそろ諦めようかと思っていたところ。
「君は釣りとかやるんだな」
「……何なの。その心底意外だという口ぶりは」
「まあ君が獲るって言ったら銃持って追い回す方だからな」
リンクと同じことを言ってファルコンが後ろから覗き込んでいる。
釣れてないみたいだな、と一言付け加えて。
「あまり余計なことばかり言っていると次の乱闘で手加減してあげないわよ」
「手加減抜きなのはいつもじゃないか。今更何を言っているんだ」
――――それもそうだ。
釣竿を握ったままため息をついた。
この男が冷やかしている以上、何としても一回は釣りあげたい。
リンクに呆れられるのはいい。
だから言ったじゃないかと言いつつすぐ流してくれるだろう。
だが、ファルコンは何かネタがあればそれでずっとからかってくる。
普段からかっているのは自分だから自業自得と言えないこともないのだけれど。

「…………全然釣れないな」
「いちいちうるさい。集中力が途切れる」
「そうじゃなくてもこちらに意識向けすぎだった。だいたい見られていたら集中できないというのは素人の言い訳だ。君はプロフェッショナルだろう?」
そう言われると反論のしようもなく、膨れながら釣り糸を垂らす。
しかし状況は何も変わらない。
一回やらせてみろというので思いきり笑ってやるつもりで釣竿を渡せば、その途端に大漁御礼。
――――悔しくなんてない。魚ごときに避けられた所で。
「泣くなよ?」
「釣りごときで誰が泣くかっ!」
「そうやって殺気立っているから魚に逃げられるんだ。釣りなんてもっと落ち着いてやるものだ。眉間に皺寄せてたら君の美しい顔が台無しだしな」
釣竿を返して軽く笑う。
ファルコンなりに宥めているつもりなのだろう。
――――――落ち着いて。
心を研ぎ澄ませ、浮にだけ意識を集中させる。
待つこと数分。

ピクリ。

釣竿を思い切り引き上げると、大きな魚がビチビチと宙を揺れていた。
「……こんなものか」
「簡単だったろ?」
「…………ありがとう、ファルコン」
「え? あ、ああ……別に礼を言われることはしてないが……は、はは……」
「何なのその態度。私が礼を言うことがそんなに珍しい?」
「違う……いや、違わないのか? うーん…………」

 

リンクに貰った串に一思いに通して、傍に起こした火にかける。
「…………丸焼きっていうのはどうかと思うんだが」
「塩はある。胡椒もある。何が不満なの?」
「まあ、確かにそりゃそうなんだが……」
ファルコンが釣った分の魚も火にかけ、なかなか豪華な昼食となった。
「いでで! 骨、骨が!」
「水を飲めばいい。ここの川は綺麗よ」
「だから丸焼きはやめろと言ったんだ!」
ほんの気まぐれでやってみたことだが――――
――――なるほど、釣りも悪くない。

「丸焼きが嫌ならルイージにさばいてもらえば良かったのに。分け前あげればやってくれるよ?」
リンクにこう言われたのは、釣果に満足し、釣具を返しにいった夕のことだった。

 

初書きファル&サム。
当時はアニメ版知らなかったしゲーム版の堀川ファルコン。私的には真面目、でもちょっとお調子者です。
性格とか口調とか来歴とか違うしお互いの雰囲気も結構変わるんで、それぞれに萌えがあって好きです。
という訳で今は基本はバートさんですが、やっぱり時々ダグラスさんのも書くと思います。

 

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