■わがままファッション

~ファッション雑誌ステイシアより、人気ショップの一日~

お客様のわがままに応えるのも、セレクトショップの仕事。
特にこの店はよくばってよくばった結果、女性だけでなく男性も、そのテイストまで最高に仕上げている。
ここにいるのは初めてのお客様。
「いらっしゃいませ、何かお探しですか?」
カリスマ店長が声をかけると、Bさん(仮名)は少し困った顔で話しはじめた。
「F-ZEROの観戦に行くんですが、なかなか若い子のファッションに疎くて」
Bさんはとある街でカフェを経営するマスターだという。
わざわざこの街まで来たのは、やはりこの店長目当て。
「店長さん、この帽子とシャツに似合ったコーディネートをお願いします」
「かしこまりました」

依頼のアイテムはキャプテン・ファルコンのプリントが入ったTシャツに、バネつきの野球帽。
五分丈パンツと白のソックス、靴をお出しする。
Bさんに走った衝撃が、記者にも見えるようだった。
「これですよ、求めていたものは! まさにサイコーの瞬間、味わってます!」
会計を済ませると、踊るように街に出て行った。
合わせるのが難しいアイテムに瞬時に対応したカリスマ店長に、こだわりを聞いてみた。

~中略~

日が落ちて夜になったが、客足は途絶えない。
この店の魅力は24時間営業であるという点にもある。
朝方やってきたBさんが、恋人のSさん(仮名)と再びこの店を訪れた。
Sさんは笑顔で店長に話しかける。あなたのコーデ、とても素敵ね。
「出来れば今回はこの帽子とシャツを使わないトータルコーディネートをお願いしてもいい?」
Bさんが後ろで抗議している。
2人が帰った後で店長に聞いてみた。
「うちのお店はカップルや男性一人でも入りやすい分、ああいうことはよくあります。トキメキは人それぞれだから、尊重しあえるといいですね」

****

「……取材許可は出したけど、前半部分は知らなかったわね」
ファルコンハウスで雑誌『ステイシア』を読みながらサムスがぼやく。
「あのアイテムを尊重してくれる店長さん、出来る人ですねぇ」
「似合わないとは言わないわ、私も」
帽子の頭についたバネを弾き、コーヒーを飲む。
「一番素敵な私を演出してもらおうかと思いましたが、サムスさんより先にあの店長さんに見せるのもなー、って」
「嘘つき。あのファッションセンスだけは天然でしょう? それに」
サムスはカウンター越しに囁いた。
「レースの時のあなたが一番素敵なことはわかっているもの」
しばらくコップを拭く手が止まり、やがて笑顔で言った。
「あなたには敵いませんね」

 

細かすぎて伝わらない非ファイターネタ、ガルモ2編。ぷらいべったー再録です。
ガルモは毎回買っている大好きなゲームなんですが、バーサムが書きたかったのかガルモが書きたかったのか行方不明なのは自分でも如何なものかと思います。
うちのスマブラではいつものことですけどね!

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