■大切な人を迎えるために

召喚の間にオーブを運び込む。
溜め込んだオーブは多く、なかなか運び終わらない。
「手伝うよ、召喚師殿」
ひょい、とオーブの入った箱を奪われる。
セリスだ。笑顔で箱を抱える。
「セリス、そういうことは相手の承諾を得てからやるものですよ」
「ふふ、母上は手厳しいね。すまなかった、召喚師殿。これを全部召喚の間に運べばいいんだね?」
「セリス、足元に気をつけて。ああ、あと腰を痛めないように……」
「ディアドラ、心配のしすぎだ。さて、私も手伝おう、召喚師殿。倉庫からオーブを運べば良いのだな?」
シグルドとディアドラまで現れたので流石に戸惑う。
何故か、と問うとセリスはまた笑う。
「リーフとナンナが召喚出来るようになったのだろう? 早く彼らに会いたいんだ」
「キュアンの息子にラケシスの娘……それにセリスの良き友だと聞いている。興味がないと言えば嘘になるな」
「セリス、シグルド様。召喚師様に圧力をかけるのはあまり良くないのでは? 召喚の儀は『縁』もありますが何より『運』が絡むと聞いております」
「そうですね、母上。これで召喚の儀が失敗しては事だ。だが楽しみで待ちきれないんだ」
セリスは笑っている。
シグルドたちの召喚の時はまた違った。エンブラ帝国から彼らを解放した後、彼は顔を合わせようとしなかった。
その時はユリアが来た。
『召喚師様、母様に会いたいです……そしてにいさまをシグルド様と母様に会わせて欲しいのです。オーブを集める時の戦力になるくらいしかわたしには出来ませんが……』
その頃のセリスはよく物思いにふけっていた。
今の笑顔はシグルドとディアドラがここにいること、そして曲がりなりにも皇帝アルヴィスと和解したことと無縁ではないだろう。
それだけに真実を告げることをためらう。
だが、言うことにした。
――――リーフとナンナはセリスのことを知らない、と。
「私のことを知らない? 私と出会う前のリーフとナンナということか?」
そういうことになるのだろうか。
あのあたりの関係性はどうにも説明しづらい。特に当事者には。
「フィンと同行していていずれ私とも出会うが、少し異なる歴史を歩むはずの可能性の世界の存在……なるほど。それであれば私の態度は召喚師殿には少々酷だったかもしれないな」
それにディアドラの言うように必ず召喚出来るとは限らない。
だから、あまり期待しないで欲しいと。
「だがやはり私は楽しみだよ。これから友になれるってことだろう? ここにいる英雄たちのように」
それでも、セリスは笑っていた。
「代えがたい戦友であり、リーフなら従弟でもある。些細な問題だよ」
「良く言った、セリス。だがその言葉が召喚師殿にまた負担をかけることを忘れるな」
笑いあう親子。
ふと視線を感じて振り返る――ユリアが物陰から覗いていた。
それが何かに引き寄せられて消える。
小声だが聞こえる。アルヴィスが今はそっとしておけ、と言い聞かせているのが。
――――言われずとも召喚したいのは山々なのだが、さて、どうなることやら。

 

来たぜトラキア! スズケンリーフとかわかりみ強すぎてヤバい!
フィンが戦禍報酬なのでお財布に優しいですね……
つかダイムサンダ自重しろぉ! 赤被りで引きにくいじゃねーか!
という訳でいつもの書けば出る教です。

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