■とある朝の風景

いつものように、青空草原に朝がきた。
名前の通り、今日も晴天。
早起きのサーナイトは、早速皆を起こしていく。
「皆さん、朝ですよー!」
寝ぼけていてもお構いなし。
しかし文句を言うポケモンはいない。
そのおかげで遅刻しなくて助かっているのだ。
――たとえ、予定がない日が大半だったとしても。

サーナイトが空を行く雲を見送った時、遠くを横切る影を見つけた。
黒く濃い影が集まった、爽やかな朝日には似つかわしくないその姿。
彼らの救助隊の仲間ではない。
イジワルズのリーダーのゲンガーだ。
「ゲンガーさーん!」 朝のサナちゃん
手を振りながら駆け寄っていくと、ゲンガーはぎょっと目を見開いた。
姿を見られるつもりはなかったのだ。
特にこのサーナイトには。
「おはようございます!」
サーナイトの笑顔は朝日よりも爽やかで。
ゲンガーはおう、とおざなりな返事をしてそそくさと立ち去ろうとする。
――――嫌いではないのだが、苦手なのだ。
しかしサーナイトは気付いていない。
彼女にとっては、ゲンガーは眠り続けていたのを助けてくれた大切な友達。
苦手だなんて、思うはずがない。
「今からお仕事ですか? 頑張ってくださいね」
持っていたリンゴをお弁当として手渡そうとして、ブンブンと両手で断られてしまった。
「ちっげーよ、そん逆だ。俺は今から帰る所なんだよ」
「まあ。夜更かしはダメですよ、ゲンガーさん」
「俺はゴーストだから夜の方がいいんだよ!」
何だかんだで立ち止まって相手をしてしまうゲンガー。
タイプの相性と性格の相性というものがあるから、不利なのは仕方がない。
彼女は目を見開いたあとぺこぺこと謝り始める。
「そうでしたね。すみません、出過ぎたことを言ってしまいました」
「そんな謝るな、うざってーから…………ほらよ」
金色に輝くグミを二個渡して、そっぽを向く。
「今回の収穫だ。いらねーからやるよ」
「いいんですか?」
「気がかわらねぇうちに貰っとけ」
「ありがとうございます! 大好きなんですよ、これ!」
ゲンガーの目の前に回りこんで手を握る。
――またそっぽを向いた。
「……ここでうまくやってるみたいだな」
安心したのか、寂しいのかよくわからない。
これでよかったのだと、わかってはいるけれど。
「ええ。本当に感謝しています。皆さん優しいですし……ゲンガーさんも」
――――感謝しなくちゃいけないのは、俺の方だ。
「あ、ゲンガーさんはお疲れなんでしたね。ごめんなさい、引き止めて」
「気にすんな。本当に嫌だったら相手しねーで帰るから。じゃあな」
「おやすみなさい、ゲンガーさん」
朝日の届かぬ山の中にゲンガーが消えるまで、サーナイトはずっとその背を見送っていた。
ごめんな、というゲンガーの声は届かなかったが、寂しげな感情を受け取って、彼女もまた寂しくなるのだった。

 

ポケダンから、ゲンガー×サーナイト。
闇の洞窟のイベント萌え! 悲恋萌え!!
このゲームやるまでポケカプに萌えるとは思いませんでしたよ、ええ。
箱入り天然娘サナちゃんと振り回されるツンデレゲンガー萌えー。

 

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